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ガルーダ戦記 第八話

 投稿者:イルザ  投稿日:2011年 4月 8日(金)00時49分23秒
  「いいのですか?シュバインだけを先陣にいかせて?」
「ああ、手柄を挙げたいそうだ。」

ガルーダに程近い街…カルカンを目指し行軍中の囮部隊…バーナとライアが兵を引き連れシュバインの後を追っていた。
シュバインが先陣で、その後をバーナとライアが後陣として追う布陣である。

「手柄を?」
「奴はもっと大きなところで活躍したいらしい…この戦いで戦果を挙げて、シャクティアナとフェルトビーンに自分をアピールしたいと隠さずに言っていた。」

もともと六界連合軍を出奔したシュバインである。
ビアスコアに拾ってもらえただけでもよしとしている状況だが、此処で終わろうと言う気はさらさら無いようで、バーナに自ら先陣を任せるように志願したのだ。
危険な任務を自ら買って出てくれるならバーナとしても断る言われは無い…シュバインに任せることにしたのだ。

「そうですか…しかし手柄を焦るものに事を上手く運ぶ事は出来るのでしょうか?」

それはシュバインの事ではない…アドリアノの事を聞いてみる。
手柄を焦り過ちを犯す例は古今東西よく聞く…アドリアノの事はやはり気になった。

「焦る気持ちはやる気の裏返しでもある…仮に奴がしくじっても俺達がフォローしてやればそれで良い。」

もちろんシュバインの事を言っているバーナであるが、ライアはアドリアノに置き換えて考えてみる。
アドリアノの思うように事が運ばなくても、生きていてさえくれれば自分が…そう思える事が出来た所で、バーナに対し頷いてみせた。

「俺が何かミスを犯したときは…その時はお前の力を当てにさせてくれ…ライア。」
「はっ…必ずや期待に応えてみせます。」

ミスを犯すつもりはさらさら無いバーナである…会話の流れからライアにさりげなく自分の気持ちを伝えようとするバーナであったが、逆にライアはその言葉の意味を真剣に受け止めてしまうのが良いところでもあり、悪いところでもあった。
真剣な眼差しで力強く応えるライアに苦笑いを浮かべるバーナであった。

「さて…報告による敵の進軍の速さからすると…シュバインはそろそろ敵の先陣と遭遇しているころだな…。」
「はい、いつでも撤退できる準備をしておかねばなりませんね。」

戦果を上げたがっているシュバインがどのような形で敵を引き連れてくるのかがわからないが、まずは味方が伏せるガルーダまで撤退する事が第一目標である。
いつでも逃げられる心構えをしておかねばならない。
そして…バーナは手勢を率いてガルーダの南方へと向かわねばならないのである。
敵にも味方にも怪しまれずに兵を動かすには、敵が攻めてきてから味方と別れる必要があった。
どの道今は動けない状況である。

「ところでだ…ガルーダの戦いが終わった後はどうするつもりだ?」
「え?」

唐突なバーナの問いに戸惑うライア。
元々帝都から逃げるようにこのガルーダの戦いに参加してきたのだ…その先の事など全く考えていなかった。
アドリアノには戦果を上げれば皇帝にライアの今後について掛け合ってもらう約束を取り付けてはいるが…側室に入る約束が完全に消える訳ではない。

「そうですね…ある意味皇帝陛下に逆らった訳ですから、帝都にはもう戻るつもりはありません…軍人を続けるならガルーダで一兵卒としてやりなおす…と言ったところでしょうか。」

戻るつもりはない…と言うよりも、戻っても居場所が無いといったところだろうか。
今の地位も捨てて、ひっそりと一兵士として軍に残る…これしかないのかと今になって理解した。
この戦いが兵を率いて戦う最後の戦いになるかもしれない…それを胸に刻み込む。

「そうか…軍を抜けるつもりは無いのか?」

ライアは軍人になるべくして育てられて来た…今までそんな事を考えた事はなかったが、人間としては結婚して家庭を持ってもおかしくない年齢である。
実際に結婚を機に退職した同僚も少なくない…自分がそうなる事はありえないと思っていたが、軍にいられなくなるとしたらそうなる事もあるかもしれない…ふと脳裏に平凡に市民として暮らす自分の姿が浮かんでしまった。

「まぁ…わかりません…。」

困惑気味のライアの表情を見てバーナは何も考えていなかったのだと理解する。

「そうか…今後の事はガルーダの戦いに勝利した後…だな。」
「そ、そうですね…。」

期待に沿える答えを返せたかどうかバーナの表情を伺うライアだが、作戦の事なのか…自分の事なのか…バーナも何か考えている様子で、腕組みをしながらじっと前を見つめていた。
なぜこのタイミングでそんな質問をしてきたのか意図がわからなかったが、自分の今後を気にしてくれているなら嬉しく思える自分がいる。

「ライア…お前の部隊は此処に残れ。」

バーナがライアの方を向き、視線を合わせながら静かに…そして唐突にその言葉を放つ。
話が急に変わるので一瞬バーナの言ったことが理解できなかったライアだったが、自分が此処に残ると言う事はバーナが先行し、自分が後方に回ると言う事であり、それを理解する。

「俺がシュバインの援護を行う…お前の部隊は、味方の部隊が前方より引き返してくるのを確認した後、早々にガルーダに戻り、イルザに報告を入れてくれ。」
「そんな…私の部隊はビアスコア帝国の主力部隊の一つです!他国の援軍に危険な任務をお任せして自分が後方に回るなど私には…。」

バーナとシュバインが命がけの陽動任務に当たる中、自分の部隊がただの連絡員などと受け入れられないのがライアの性格である。
それに報告する相手がイルザだとなると、もしバーナに何かあった時に申し訳が立たない…ということもある。

「ガルーダを守るのはお前…お前を守るのは俺…お前の役目はここで戦う事では無い…ガルーダでの戦いでイルザがお前に重要な任務を担ってもらうつもりでいるらしいからな。」

異論反論は許さないとばかりに、ライアの言葉を待たずにバーナは馬を走らせた。
バーナの手勢がそれを追いかける…砂埃を上げながら、ライアをどんどんと抜かしていく…ライアは一瞬追いかけようかとも思ったが、思いとどまった。
戦いに私情は挟まない…そう決めたのだ。

『バーナ将軍…これが最後の別れじゃないですよね…。』

数倍の相手に向かっていくバーナとシュバイン…帰って来る保障は無かった。
バーナとイルザが自分に期待を掛けてくれているのなら、裏切るわけにはいかない…自分の任務は此処で味方を待ち、そしてガルーダへと帰る事なのだと再び言い聞かせる。

「将軍、どうしますか?」

不安そうな兵士がライアに声を掛ける。
ライアの迷いを察したのだろうが、ライアは表情を引き締め、後ろにつき従う兵士たちの方を向く。

「我々は此処で待つ…前方より味方の旗が見えた所でガルーダへ急ぎ戻る…我々は此処に戦いに来たのではない、囮部隊を待つ本隊へ作戦成功の報を持って帰る事だけを考えるのだ。」
「はっ…。」

ただ前だけを見据えていた。
バーナが走り去った…敵との遭遇戦があるだろうその方向を…。
もう戦いは始まっているのかもしれない。
考えたくも無いが、敵は先陣を打ち破っていきなりこちらに向かってくるかもしれない…。
ただ起こった事実を、敵の接近を伝えるためにライアは待ち続ける…。


後にガルーダの地にて語り継がれる女将軍…ライアの戦いが始まった。
 
 

ガルーダ戦記 第七話

 投稿者:イルザ  投稿日:2011年 1月25日(火)01時06分14秒
  「もう皆集まっているよ、早く入りな。」
「すまない、遅くなった。」

朝7時…夜明けと共に召集が掛かる。
いつもの会議室には軍の主要メンバーがそろっていた。
ルカが一人廊下でイルザを待っていた。
早く来るように手招きすると、長い距離を走ってきたのだろう、息を切らせながら走るイルザが扉の前に到着する。

「さぁ、早く始めよう…時間は残されていないどころか、既に出遅れているようなものだからな。」
「遅刻しておいてよく言うよ…さ、皆がアンタを待っている。」

扉を開けるルカ、イルザがそれに続くとテーブルを囲むように座る面々を確認する。
ビアスコア帝国の一部がこの城を抜け出した中、誰が残っているのか…祈るような気持ちで一人ずつの顔を見ながら頷く。
そして一通りの顔を確認すると、イルザが上座に座り、ガルーダ周辺の地図を広げる…なにやら色々書き込まれていた。

「まずは遅れた事をお詫びする…そして私に作戦を一任してくれた事、このガルーダに残ってくれた事を感謝する。」

一同が小さく頷いた。
力ずくで勝ち取った指揮権…皆が付いて来てくれるかどうかは不安なところだったが、非常にありがたい面子がガルーダに残ってくれたのだ。
その中の一人、ライアが代表して立ち上がり、イルザの方に向き頭を下げる。

「今回の事態、申し訳ありません…援軍を借りる立場でありながら我が軍の一部が離脱した事…私からお詫び申し上げます。」

他のビアスコア軍の将兵もそれに習う。
イルザは小さく頷き、ライアに着席するように促した。

「ライア、お前が残ってくれて心強く思う…他の者も同じだ…私の提案した策は最終的な勝利の為に全てを犠牲にするものだ…ビアスコアの人間にとって納得できないのも無理は無い…だが勝利の為に皆で力を合わせ、敵をこのガルーダの地で打ち破ろう。」

イルザの目指すのは敵の撃退では無く殲滅…。
倍の数を持つ相手を対峙には一致団結して当たらねばならなかった。
この会議の出席者…ガルーダに残っていたのはライア・ベルト・シュバイン…残っていて欲しかったメンバーは全員そろっていたのが救いである。
他の将兵もライアやベルトが纏めてくれたのだろう、付いて来てくれると素直に思った。

「さて…大まかな作戦は簡単に説明すると、皆も知っての通り、敵をガルーダにおびき寄せガルーダにて篭城戦を行うというものだ…。」

ガルーダまでの街は捨てる…と言う事である。
それが最後まで納得できなかったアドリアノは離脱してしまったのだが…此処に残る者も心から受け入れられるものではない。

「ガルーダ付近まで敵とは交戦せず…第一防衛ラインまで敵が来たところで攻撃を仕掛ける…そして敗走すると見せかけて敵の先陣をガルーダまでおびき寄せて伏兵により打撃を与える。」

まだ敵はこちらの戦力を把握していない…それを利用して一戦目で敵に痛撃を与えようというのだ。
ビアスコアの主力は離脱したとは言え、こちらの戦力は向こうが考えているよりもずっと多いはずである。

「この任務にはバーナに指揮を執ってもらう、副官にはライア、シュバインを付ける。」

三人が頷く。
ライアにとってバーナ、シュバインは戦場で戦う武将…自分とはタイプが違う将である。
誰に言われるまでも無く、補佐に徹するという立場だと理解するライア…ライアは剣を持って戦うタイプではない。

「後は伏兵だ…敵の前衛がガルーダに雪崩れ込んできたら思い切り撃ちまくれ…ベルト、バッチ…そして私でそれぞれの国の部隊を指揮する。」

ビアスコアはベルト、フェルトビーンはバッチ、シャクティアナはイルザが指揮する…じっくりと篭城戦を行うには相手の先陣を叩き、慎重に行動させる事が必要だと考えたのだ。
敵を引き連れる役は重要で、わざと負けるというのも中々難しいものである。

「囮部隊の行動は任せる…状況に応じて動いてくれ…敵部隊接近の合図は忘れるなよ。」
「ああ、任せておけ。」

イルザはバーナを信頼している。
策を授けるのではなく、秒単位で変化する戦場にて臨機応変に現地で対応させるのだ。
現場程正確な情報を掴める場所は有りはしない…それが自ら出撃するイルザの考えである。

「とりあえず今はそれだけだ…各自早々に持ち場に就いてくれ。」

イルザがそう言うと全員が立ち上がり、足早に会議室を後にした。
早々に部隊を纏め、出撃せねばならないのだ…質問の時間すら与えられず、将達は言われるがままに動くしかなかったのだが作戦は単純である。
準備にはそれほど時間は掛からないだろう。

「バーナ将軍、よろしくお願いします。」

皆同様足早に会議室を後にしたバーナにライアが声を掛ける。
後ろから声を掛けられた形になるバーナが振り向くと、ライアに小さく頷いた。

「ライア…命懸けになるが…勝負はガルーダで行うのだ…焦るなよ。」

一歩逃げるタイミングを間違えば全滅…それが囮役なのだ。
逃げるのが早すぎれば相手に怪しまれる…まさに命懸けである。

「はい…ガルーダを守りたいという気持ち…将軍にお預けしていますから…。」

ガルーダを守るという気持ちが空回りしないか心配していたバーナだったが、自分が昨日ライアに掛けた言葉が返って来て安堵の表情を浮かべる。
ガルーダまで敵を誘い込むということはガルーダが攻撃を受けるという事であり、内心穏やかでないであろうライアだが、バーナの心配は杞憂であった。

「そうだな…預かった以上は俺達も全力で守る…ガルーダも…お前もな。」

キザな台詞がよく似合うバーナだが、不思議と不快に感じないのがこの男の凄い所…帝王親衛隊の実力なのかも知れない。

「はい…兵の編成は任せておいてください、将軍は出撃の合図だけお願いしますね。」

そう言うとライアはバーナを置き走り去っていった。
兵士達が出撃を待つ待機場へと向かうのだ。
バーナはそれを見送ると、身支度をするために自分の部屋へと足を向ける。

「良く出きる娘だ…頼りになる…。」

自分を慕ってくれていると感じる…信頼されているのだ。
理解力があり、兵士達を動かす能力もある…頼もしかった。

「この作戦が終わったら…連れて帰るのも悪くないか…。」

バーナにとっては副官として…女性として…ライアは魅力的な存在になるだろうと感じた。
イルザとはまったくタイプの違う…将軍に尽くしてくれる副官…そして女性なのだ。
戦場での働きが本物ならば、何とかして口説き落としたいものだ…など考えていると、自らの背後から忍び寄る影に気がつくのが遅れてしまう。
後ろを振り返ると、気配を消しながら近づいてきたイルザが自分を見上げていた。

「油断するな、戦いはもう始まっている…フフ…。」

このイルザとの出会いは敵として対峙した所から始まった。
バーナが任務から帰還する途中、とある山岳地帯でイルザが山賊を率いて襲い掛かって来たのだ。
今まで見た事の無いような統率のとれた動きで、戦利品である物資を奪われ、そして追いかけられぬよう道を破壊し逃げ去って行った…その後も山岳地帯を抜けるまで何度も執拗に物資を奪われ続け、もはや盗られる物が何も無くなるまでにされたのだ。
そしてよほど自信があったのだろう、山岳地帯を抜けようかと言う時に、自ら将軍であるバーナに一騎打ちを申し込んで来たのだ。
イルザの槍の腕もなかなかの物だったが…お返しとばかりにイルザの槍を奪い、そして捕らえたのだ。
素直に惚れていた…このイルザの才能に。

「また何か考え事をしているな?」
「なんだ…他に何か用があるのか?」

懐かしい思い出をしているとイルザがまたバーナの思考に割り込んでくる。
初めての出会いでは恥を掻かせられたが、仕返しをするよりも自分の手元に置いておく方が良いだろうと、イルザに自分の下に来るように声を掛けたのだ。
ライアも自分の下に居てくれると助かる存在になるはずだと妙に納得してしまう…イルザに持っていない…もとい、足りない部分を持っているのだ。

「そうだ…今回ガルーダで戦うにあたって、敵を一撃で仕留めるには伏兵による奇襲の成功が全ての鍵を握る…。」

急に真面目な顔つきに変わるイルザ、それを見て何か重要な話なのだろうとバーナも聞くことに集中する。
イルザは数多くの戦場を渡り歩いてきた猛者なのだが、今まで数的不利な状況で敵に挑む事が多く、ここ一番での奇襲を得意としているのだ。


「情報が漏れると色々困るからな…直にお前に伝えておきたかった…という訳だ。」
「なるほどな…作戦の根幹に関わる部分か。」

皆の前で話すとどういう形で敵にリークするかわからないもので、こうして直接本人に伝えようと言う訳である。
すなわち、他言無用…密命である。

「敵を引き付け、ガルーダまで後退する際に…お前の部隊はガルーダより南方の街、ディアニに潜伏してもらう…。」

後退するだけでも難しい状況だが、どさくさに紛れて隊を離脱させろというイルザの策は、バーナに取っても難しいものであったが…元々このガルーダで敵を撃退では無く殲滅するという事自体が無謀な事なのだ。
やらざるを得ない…頷くしかないのが今のバーナの立場である。

「俺はお前の目付け役で来ただけなのだが…こき使ってくれるな。」

元々戦闘に参加する気までは無かったのだが、イルザのエース級の働きを求められている自分が妙におかしく思えた。

「私とてこの規模の軍勢の指揮を執るのは初めてだ…大事な所は信頼出来る者に託したい。」
「ふむ…。」

なかなか奥ゆかしいイルザの言葉に悪い気はしないバーナであった。
女らしさを全く見せない普段から異常に強気なイルザの弱音を聞くと、仕方ないと思わされてしまう…それすらもバーナの性格を突いたイルザの策なのかも知れないが…。
強気を装っているライアとは正反対だと、ライアの顔を思い浮かべたその時…一つの約束を思い出す。
守る…という約束を…。

「ライアをそのまま俺の軍に組み込みたいのだが…。」

せめてもの交換条件のつもりだった。
ライアから離れると守ると約束した物も守れない…危険な任務に引き込む事になる訳だが…ただ自分の手元に置いておきたかったのだ。

「ライアには重要な役を担ってもらうつもりでいる…シュバインなら構わんが?」
「いや…いい…。」

戦いに私情を持ち込むなとライアに言った事を思い出す。
イルザがライアを重宝するのならばそれ以上の事は言えるはずも無い…それにライアとの関係をイルザに気取られるのは避けたかった。
今はまだライアの部屋で晩飯を食って寝たとしか伝わっていない…はずである。
色んな約束をしたとなると、茶化されるに決まっている…バーナはイルザをそう見ていた。

「そうか…なんにせよ、お前の動きは非常に重要だ…何かしら合図を送る…それまでディアニで息を潜めていてくれ。」
「わかった…全て上手くやってやる…お前はガルーダでの戦いに専念してくれ。」

それだけ言うとバーナの方からイルザに背を向け自室へと歩みを向ける。
イルザもそれ以上の言葉を掛けず、バーナが見えなくなるまで見送った…見えなくなるまで待ったのだ。

「バーナ…こんな私とて女なのだ…お前の気持ち…薄々感じているのだがな。」

何度かバーナとライアの表情を見ている内に、二人がただ食事を共にしただけの関係だけでは無い事に気がついた。
元々異性からモテるバーナ、女と食事をする事など良くある事なのは知っていたイルザだったが…今回はそれだけには留まらないと思えたのだ。
それはバーナ自身も理解していない感情なのかもしれない…ライアに気があるのだろうと感じたのだ。

「ああ見えて、恋愛には疎いからな…奴は…フフ…。」

人の好意に気がつけない性格…というのがイルザのバーナに対する見方である。
悪く言えば鈍感なのだ。
相手に対しても…自分に対しても。

「さて…次はシュバイン…そしてベルトか…大軍を率いるという事は意外と面倒だな…ハハ…。」

全軍の出撃を前にやらねばならない事は多い…イルザ自身の出撃も迫っているのだ。
廊下を駆け出すイルザ…バーナ以外にも密命を伝えに向かう…息が切れるまで自分の足で伝えに行かなければならなかった。
建物を飛び出すと風は冷たく…今まさに冬を迎えようとしている事を思い出させる。

連合軍の冬の嵐…そう名づけられた作戦…今まさにガルーダ軍と対峙する時が来たのだ。
最前線に立つバーナとライアの戦いが今まさに始まろうとしていた…。
 

ガルーダ戦記 第六話

 投稿者:イルザ  投稿日:2011年 1月25日(火)01時04分22秒
  「イルザッ、起きろっ!!」
「う…む…どうした…。」

身体を揺すられる感触に目を覚ます…シャクティアナ帝国の作戦参謀であるイルザである。
起こした張本人は相当慌てているようだったが、イルザの目はまだ完全に開かれてはいない。

「何か異変でもあったのか?」

自分を起こした相手を確認するとイルザの脳が徐々に覚醒する。
本来なら自分を起こしにくるような相手では無い…同じく援軍としてこのガルーダに入ってきたフェルトビーンの猛将、ルカでだった。
窓の外を見るとまだ月が高い位置に座る…相手はシャクティアナの者ではなく、他国の者…異変があったとしか思えなかった。

「異変も何も…アドリアノがビアスコアの兵の一部を率いてガルーダを抜け出したらしい。」
「………そうか…。」

ルカとイルザはこのガルーダで初めて顔を合わせた仲であるが、会話を重ねる内に互いに実力を認め合い、良い関係を築き上げる事ができた信頼できる間柄である。
こうしてイルザの眠る…シャクティアナの兵士達が大勢寝泊りする大部屋へと堂々と入ってこられるのもルカとイルザの関係を兵士達も知っているからである。

「以外と冷静だね?」
「なぁに、気にするな…これでガルーダの実権は私が握ったようなものだからな…フフ…。」

今の状況を案ずるルカと、不適な笑みを浮かべるイルザ…対照的である。
フェルトビーンの全面協力は約束されているようなものだし、シャクティアナの増援…残されたビアスコアの兵士を自由に扱えるようになるわけで、完璧ではないにせよ、イルザの望んだ結果なのだ。

「これからどうするのさ。」

フェルトビーンのトップであるルカがこうして自分に次の段取りを尋ねて来るという事は、頼りにされているという証拠である。
大部屋の片隅…他の兵士達も大勢居る中で考え込むイルザを兵士達も興味深々に見つめる。

「よし…軍議は昨日決めた時間のままで行う…私はこれから皆に伝える作戦の要点を纏める作業に入る。」
「そうかい、じゃああたしはどうしようかね…。」
「とりあえずビアスコアの残っている将軍や兵士達の情報を集めてくれると助かるな…。」

ビアスコアの残存勢力を自分の手で使うにはビアスコアを束ねる将軍が必要だ、自分が信頼できる数少ない将、ライアかベルト…どちらか居てくれれば助かると祈るイルザ…。
ルカは大きく頷いて見せる…ルカとてどの程度の規模の兵士が離脱していったのか詳細な情報は得ていない。

「イルザさんよ、俺達にまともな戦いをさせてくれるんだろうな?」
「大見得切ったからには頼みますぜ。」

二人の周りには兵士達の壁が出来ていた。
こんな所で寝泊りしているイルザの気が知れないルカの心境だったが、自分も気が動転していて本来一般兵には隠しておかないような情報を兵士達の前で話してしまった己を恥じる。

「当然だ…だが敵は普通の敵ではない…覚悟を持って戦い、頭の切れるものが指揮している…私の手柄の為に、貴様達の力を存分に使わせてもらうぞ。」

自信に満ちた表情で兵士達で兵士達に言うイルザ。
自分の手柄の為にお前達を使わせてもらうと言われれば兵士達も内心穏やかではないはずだが、イルザは元々戦場に出て指揮をするタイプで、共に命を掛けて戦っている…兵士達はそれを知っているからイルザには黙って従うのだ。

「しかたねぇな。」
「とりあえず寝ようぜ。」

ぞろぞろと各自の寝床に戻っていく兵士達、男達の壁はあっという間に消え去った。
イルザが立ち上がると、ルカもそれに倣う…男達は寝るが、二人はこれから動き出すのだ。

「よくこんな所で寝れるね…あんた。」
「一番戦場に近い所で寝る…そうすれば不測の事態が起こった時に一番早く戦場に出れる…そうだろう?」

階級の高さを全く感じさせないイルザの行動や言動…只者では無いと思ってはいたが、単に変わっているだけなのかもしれないとルカは感じたが、それがまた自分と馬が合う要因なのだろう。
兵士達との距離を保とうとしているのではなく、戦場になるべく近い場所に居たいが為に、結果として兵士達と同じ目線の生活を送っているという訳だ。

「さて…俄然やる気が出てきたな…フフ…まぁ見ていろ、こう見えても戦場の場数は踏んでいるんだ…この土地、そしてあの相手に相応しい戦い方をしようじゃないか…。」

昨日の会議とは全く違うイルザの表情に不気味な感じさえ受けるイルザの笑み、自信に満ちた表情…思考が戦闘モードに入ったのだろう。
ルカはまだ実感が沸いていなかったが、連合軍はもうビアスコアに進入しているのだ。
明日の朝にはいくつかの街が占領されているのだろう…そしてイルザの策が採用される事が決定的となると、もうすぐこのガルーダへと敵がやってくるのだ。

「まぁこっちとしても、あんたの策が一番良く考えられていると皆で判断したんだ…とにかく頼むよ。」

そう言うとルカが寝ている兵士達の上を跨ぎながら部屋を後にする。
戦場は近いのだ、ゆっくりしている暇は無い…とにかく情報が必要だった。
ルカは城内の情報を、イルザは敵の情報を整理し、決戦に備える…そのための準備を進めるには、もはや寝る時間さえ惜しく感じるほどだった。

「シュバインの奴が言っていたな…相手の総大将はサルファーと言う女…さて…我が策何処まで通用するかな…フフ…。」

若いが頭の切れる女軍師…育ちは違えど、立場は同じである。
6つの世界の長達を束ね、ここまで勝ち進んできた相手…自分の腕を試すには絶好の相手だと思った。
出世の為でも…シャクティアナの為でもない…自分の実力を試すため…そして修行の成果を見せるためにガルーダの戦いの主人公の一人、イルザは動き出した…。

その頃ライアは…。

「アドリアノが離脱するなんて…いくら主力部隊を引き連れていったからと言ってそれでどうにかできる訳が無い…。」

ベルトから主力離脱の報告を受けていた。
無謀な策は使わない性格だと思っていたライア、今回のアドリアノの行動は全く予期していないものであった。

「俺も誘いを受けたんだがな…流石に援軍が助けに来てくれているのにそれを放って行くと言うのはまずいだろうと思って俺だけでも残ると断ったんだが…お前には声も掛けていなかったとは意外だったな。」

ベルトはビアスコアの主力の将軍である…アドリアノとしては当然連れて行きたかったのは間違いないが、ライアには部隊を引き連れ周辺警戒に行くと言い、離脱の話までは聞かされてはいなかったのだ。

「あいつ…本気で敵に立ち向かうつもりなのか…国を守る兵士としては立派だが…無謀としか思えん。」

アドリアノは街の一つも相手に渡すつもりは無いと会議で言い放っていた。
援軍も含めての全軍で当たったとしてもまともに当たれば蹴散らされるのは間違いないのだ…アドリアノの身を案じるベルト。

「いや…あの二人の口論の中でそれが無理なのはアドリアノも理解していたように感じた…私の勘だが…どこかで兵を潜めているのではないだろうか…。」

軍議の中でイルザの指摘に手も足も口も出なかったアドリアノの様子から察したライアの感覚である。
ただガルーダ司令たる自分の力で敵を撃退し、実力を見せたかったが…イルザに横槍を入れられたがそれに反論できず、イルザが行うであろう作戦にあわせ、独自の判断で最大の戦果を上げようと…ライアはそう読んだのだ。

「なるほど…おいしいところを持っていこうという訳だな…アドリアノらしくない…何処か冷静さを失っている…。」
「そういえば…。」

数日前…自分が此処に来た理由をアドリアノに話したライア…自分は皇帝の側室に入るよう声を掛けられたとアドリアノに打ち明けた事を思い出す。
その気が無いライアに対しアドリアノは自分が手柄を立てれば皇帝に、ライアの気持ちを伝えると約束していたのだ。

「まさかな…フフ…しかし…。」

自分の為にだとまでは思わなかったが、手柄という所が引っかかる…どうもアドリアノは功を焦っているように感じられたのだ。
出世街道に乗っているとは言え、戦いに負ければ全てを失うのだ…イルザの策を自分の手柄にする事もできるはずなのに、独自に動いてまで自らの戦果を手にしようとするのなら…アドリアノには何か別の意図があるとしか思えなかったのだ。

「どうした?」
「いや…。」

ベルトが目の前に居た事を一瞬忘れてしまい、慌てて我に返るライア。
周りが慌しくなってきた事に気がつく…恐らくある程度今回の情報が行き渡っているのだろう。

「俺のように全ての兵が離脱した訳ではないらしい…皆が不安がる前に俺達で残った者を纏めていかなくてはならんな。」

此処に残った将軍は声を掛けられているだろうが、一般の兵士達は何が起こっているのか全くわからないだろう…パニックになる前に抑えておく必要があった。
そしてそれができるのはベルトとライア…アドリアノに一番近かった者だけである。

「そうだな、明日の軍議までに兵士達をしっかり指揮できる状態にしておかねば…我々が援軍の足を引っ張る事になるぞ。」

そうなればガルーダでの戦い処ではなくなってしまうばかりか、あっさりとガルーダも敵に飲み込まれてしまうのは明白である。
副帝都ガルーダの敗北はビアスコア消滅までのカウントダウンでもあるのだ。

「よし…俺は兵士達の動揺を抑える…ライア、お前は他の将軍や援軍との調整役を頼む。」
「わかった…次の軍議までに正確な情報の収集と部隊の整理…終わらせよう。」

互いに頷くと、足早に別れる…ライアの視線は将官部屋が並ぶ建物に向かっていた…。
アドリアノの謎の行動…その真意はわからなかったが…何かがアドリアノを追い詰めていたのだろうが…もはやそれを知る術は無い。
自分が今、ガルーダを一つに纏めなければ戦いには勝てないのだ…ガルーダの敗北はアドリアノの失脚…アドリアノとて皇帝陛下に意見するとまで言ってくれた上司である…それに何よりも幼い頃から共に過ごした友人…そうはさせたく無かった。

ガルーダの戦いの主人公の一人…ライアは走り出すのであった…。
 

ガルーダ戦記 第五話

 投稿者:イルザ  投稿日:2011年 1月10日(月)01時04分25秒
  「ふざけるなっ!」
「私は真面目に言っているっ!!」

怒号が飛び交う会議室。
六界連合軍接近の報を受け、各国援軍も参加する作戦会議だったのだが…アドリアノが考えた作戦に他国…特にシャクティアナの将・イルザが真っ向から異を唱えたのだ。

「この国の街の一つも相手に渡す事は許さん!!」

アドリアノがイルザを見下ろしながら叫ぶ。
他のビアスコア帝国の将も頷くが…戦力差は圧倒的に六界連合軍が勝っており、正面から戦って勝てる相手でない事は明らかである。
シャクティアナの取りたがっている作戦を知るライアは冷静に事態を見守る事に徹していた。

「こちらも遊びに来ているのではないっ!!街がどうのこうのではなく、相手に勝つ事だけを考えるべきだッ!!」

今度はイルザがアドリアノに向かって吼える。
最初は下手に出てアドリアノを言いくるめるつもりだったイルザであったが、思いの他アドリアノの意思は固く苛立ちをつのらせ、いつしかアドリアノと口論になっていた。

「相手は国を持たぬ連合軍だっ!拠点を取らせず戦いを長引かせればいずれ崩壊するっ!!」

それがアドリアノの考えだった。
それに…ガルーダ周辺は自分が管轄しているのである…一つとして失いたくは無かった。

「敵は我らの何倍の戦力に膨らんでいるのかわかっているのかッ!どうやって一つの街を守れるというのかッ!!」

アドリアノの気持ちはわからないでも無いが、イルザにとっても自国の人間に実力を見せ、実績を作っておきたい一戦なのだ。
アドリアノの戦い方でこの国が滅ぶも、守るも勝手だが、自分の考えた策でどうしても戦ってみたかった。
睨み合う二人…ここでイルザが沈黙を続けていたライアに合図を送り呼び寄せる。

「まて、我が国の将軍に何の用だ?」

なぜそこでライアを呼び寄せたのか全く理解できないアドリアノが詰め寄るが、シャクティアナの兵士がアドリアノを制する。
ライアがイルザの傍までやってくると、なにやら耳打ち…ライアが小さく頷き、部屋を後にした。

「ちょっとした頼みごとをしただけだ…何、すぐに戻ってくる。」

険悪な雰囲気の中、もはや味方同士なのかどうかすらわからないような言葉の応酬が続く。
ビアスコアにとっては国の存亡を賭けた戦い、シャクティアナにとってはイルザの実績作り…と、ビアスコアの方がこの戦いに賭ける重みを感じているはずなのだが、アドリアノは中々イルザを論破する事ができない。
それどころかイルザの異常なまでの緻密な戦略プランをぶつけられると、それに対抗する策が無く、ただ口答えするだけにとどまってしまう。

「失礼…遅くなってすまない。」

そんな中会議室に入ってきたのはシャクティアナ親衛隊のバーナである。
今回の増援部隊の中ではフェルトビーン帝国を入れても一番位の高い人間だろう。
横にはライア…バーナを呼びに行っていたのだ。

「………貴様か…。」

再びライアとの2ショットを見せ付けられるアドリアノ、面白く無いとイルザを睨みつけるが、イルザは余裕の笑みを返す。
バーナはどかっと末席に腰を下ろし、腕を組んでテーブルの上にあった水を飲む。
ライアとは丁度対面の位置である。
イルザはいざとなればバーナの強力な口の援護射撃を借りるつもりでバーナを呼んだのだ。
それにアドリアノがライアの気を引きたがっていることも知っている…バーナとライアが一晩を共にし、アドリアノがそれを知っている事も承知済み…全て計算済みの事だ。
こうなれば散々アドリアノを罵って、部屋中の人間にアドリアノの評価を落としてやろうと考えたのだ。

「こちらから相手にぶつかって行ってとしても数で押されてどうせガルーダまで後退しなくてはならんのだ!」
「いや、我等には地の利と負けられないという気迫がある…倒せずとも相手を食い止め、そして本国にさらに増援を要請させれば良い!」

相変わらずの平行線が続く…最初から相手の案を受け入れるつもりが無い二人にとって議論など意味の無い事なのだが…。
周囲の人間もどう切り上げて良いのか悩んでいる所に、一人の男がバーナに白羽の矢を立てた。

「俺としては、先ほどから無言を貫いているバーナ殿の意見を是非拝聴したいな。」

最近何処かから流れてきたというシュバインというビアスコア帝国の新参の将である。
ビアスコアよりもイルザに重宝されてこの席に座っていた。
この男…少し前まで六界連合軍の一つの国の王であった男である。
それを聞かされたのはアドリアノとイルザと一部のフェルトビーンの将軍だけだった…シュバインはアドリアノにこの援軍の将達を率いる力は無いと見抜いており、自分から援軍側の将に近づいて来たのだ。

「当初は他国の援軍故、身をわきまえようと思ったが…ここは我等が明確に主導権を握らなければ、この戦いの勝利は覚束ない様だな…三国連合の軍勢である以上、ここは明確な総指揮官をここで決めるべきだと思う。」

流石は冷静な意見であると、イルザとアドリアノを除く全員が頷く。
イルザとしてはもう一押し、自分に有利な発言が欲しかったのか、バーナに目で合図を送るが、バーナは再び腕を組み黙り込んでしまった。
自分の力で納得させて見せろと言う事だが、イルザと同じくアドリアノも黙っては居ない。

「なっ…総司令官はビアスコアの中から出すに決まっているではないかっ!」

バーナに噛み付きそうな勢いだったが、そこはライアが止めに入る…またショックを受けるアドリアノであった。
なぜライアが自分の前に立ちはだかるのかわからず動揺するが、さすがにライアに阻まれては下がらざるを得ない。

「うむ、あの侵略軍は、軍勢の多さだけではない、したたかな狡知を持つ将が多い手ごわい相手…指揮系統の統一化は最優先するべきだ、私もその意見に賛成だな。」

シュバインの意見もアドリアノに追い討ちをかけた。
自分の怒りを、意見を味方の将2人に抑え込まれたのだ、やり場の無い怒りがアドリアノに冷静さを失わせた。
またしてもバーナに一本取られた形となったのだ。

「まぁ何にしてもだ、一度互いに冷静になった方が良い…互いに納得出来ないのなら少し時間を置いてもう一度話し合えば良いだろう。」

バーナのその言葉に会議は中断と言う事になった。
憮然とした表情の二人…アドリアノとイルザが早々に部屋を出て行くと、両陣営の部下達が慌ててそれを追う…あっという間に誰も居なくなった部屋に残されたのは、バーナ、ベルト、シュバイン…そしてライア。

「どうなるんだろうな、俺達。」

最初に口を開いたのはベルト、元々生粋の戦士であり、策はライアやアドリアノに任せるつもりだったが…此処まで混乱すると誰につけばわからなくなる。
ビアスコア帝国存亡を賭けた戦いだったはずなのだが…不安だけが募る。

「俺達にできるのはいつでも戦いに出られる準備だけだ…どんな作戦であれ、全力で当たれる準備をしっかりな。」

バーナが立ち上がりながらベルトの肩を叩き、部屋を後にする。
部屋にはライアとベルト二人が残された。

「アドリアノの奴…なんか変だな?」

元々冷静沈着なタイプではないが、今日のアドリアノの怒りはベルトもそう目にした事の無いぐらいのものだったらしい。
ライアも色々と作戦に自分の意見を述べるつもりでいたのだが、今日のあの二人の剣幕の前に怖気図いてしまった。

「ああ…何か焦っているような感じだった…まぁ自国の領土が攻撃されるのだから冷静では無くなるのかもしれないが、それだけではないような…。」

まさか自分の気を引こうとしているとは全く思っていないライアが困惑の表情を浮かべる。
アドリアノの事は気になるが、やはりガルーダを守る為にはイルザの案の方が良く考えられていると言うのが実感であった。
しかしあそこまで頑なに自分の意見を通そうとするアドリアノに部下であるライアはどう対処しようか悩まされる立場である。

「俺は戦士…決められた任務を命を賭けて実行に移す…お前は責任を持って俺達を動かす…アドリアノにイルザさん、お前やバーナ将軍が間に入らねばならん時もあるだろうな。」

バーナ…歴戦の戦士であるうえに大人びた雰囲気を持っているように感じる。
子供のような二人の口論だっただけに、バーナの一言はライアの心をさらに打ったのだ。
頼りになる…それだけだと思っていたが…やはりライアの心の中ではそれ以上の感情が芽生え始めていた。
認めたくは無かったが…。

「ベルト…私は…何か疲れているのかな…。」

元々ライアが何か悩んでいると見抜いていたベルト、ライアは何か苦労を背負いすぎているのだろうと感じていた。

「お前一人で悩まなくて良い、俺やアドリアノが居る…ガルーダの兵士達も今回は一つの目標を持って戦う事になる…少し気を楽にしても良いんじゃないか?」
「…今回は皆を頼らせてもらおうかな…。」

今まで頼りにされる事が多かったライアだったが、それに応えようとするライアの性格は自らに苦労を与えて来たのだ。
バーナのような頼りになる存在が居る…ベルトも戦闘では頼りになる男である。
自分は自分の役割以上の事は出来ないもの…それをしなくて良いだけでも気は楽になる。

「それで良いさ、だが…作戦考えるのは俺に頼るなよ?」
「ふっ…そうだな…。」

笑みを見せるライア、ベルトも少し安心しつつ同じ表情を返す。
戦いはもう目前に迫っているのだ、少しの不安も残して欲しくない…ライアの不安はベルトの不安でもある。

「きっと上手くいくさ…ガルーダを守る気持ちさえあればどんな敵でも作戦でもな。」
「ベルトらしいな…それでこそベルトか…フフ…。」
「そうか?俺はいたって真面目だが…。」

楽天的、根性論で兵士を引っ張る男ベルトの懐かしい調子にライアの気が少し紛れたような気がした。
自分を気にかけてくれているのが良くわかった。
ライアは一つ背伸びをすると、ベルトを廊下へと促す。

「さぁ…私達も準備に取り掛かろう…残された時間…悩んでなどいられないっ!」

自らに言い聞かせるように気合を入れるライア…ベルトに復活をアピールする。
そしてベルトを押し出すように先に行かせると、腕組みをしながらベルトを見上げる。

「さあ、兵士に渇を入れて来いっ!この戦い…必ず勝とう、ベルト!」

空元気でも何でも、ベルトが知っているライアの本当の素顔が垣間見えた事に安心し、ベルトも拳を上げて応えてみせる。

「おう、頑張ろうぜッ!兵士達は任せとけ、それ以外の事は任せたからな。」

背中を向け走り出すベルト、それを見送るライア…。
互いに与えられた役割は違えど、向かう目標は同じ…互いに出来る事を精一杯やるしかないのだ。
上手くいくかどうかはわからない…だが、自分の出来る範囲を全力でやる事が迷いを払う唯一の方法なのかもしれない。
迷いは晴れたかどうかは自分でもわからない。
だが、苦しくなった時にあの人がきっと助けてくれる…今はそう思える人が居る。
何とかなると励ましてくれる友が居る。

ライアが自室に戻ったその時…六界連合軍侵攻の知らせが届く…戦いは始まった…。
 

ガルーダ戦記 第四話

 投稿者:イルザ  投稿日:2011年 1月10日(月)01時01分19秒
  「おい、ライアっ!いつまで寝てるんだ!!」

ガンガンと扉を叩く音…ソファーの上で目を覚ました黒髪の男…バーナである。
ふと横を見るとベッドで赤髪の女性が眠っている…ライアだ。
寝ぼけ眼をこすりながら記憶を辿ってみる…自分はこの女と一晩を共にし、酒を飲んで寝込んでしまったのだ…そこまで思い出した。
いつの間にか毛布も掛けられている…自分が先に眠ってしまったらしい。

「おいっ!!」

扉の外からまた叫び声が入ってくる。
相手を待たせる訳にも、静かに眠っているライアにも申し訳ないのでとりあえず扉を開ける事にした。

「何か用か…?」
「な…な…なにっ…!!」

扉の前に現われた長身の男に驚く声の主。
もう一度部屋の番号を確認するが…どう見ても赤い髪の女が出てくるはずの部屋である。

「貴様…何者だ!!ライアはどうした!!」
「お前こそ何者だ…。」

寝ぼけ眼の薄目で相手を見下ろし睨みつけるバーナは何処か凄みがあり、相手をたじろかせる。
明らかにバーナは気が立っていた。

「俺は此処の司令官であるアドリアノだ…貴様後で厳罰だぞっ!!」
「………そうらしいな。」

その言葉でようやく目を覚ますバーナ、目の前に居るのはこのガルーダで一番階級の高い軍人であるアドリアノそのものであった。
もっともなぜそこに居るのかまではわからなかったが…。

「すまんな、俺はシャクティアナ帝王親衛隊…氷輝帝と呼ばれる…バーナだ。」

氷輝帝…あまり自分から名乗る事は無い肩書きだが、とりあえず相手を威嚇するためにあえて色々な肩書きを付けて自己紹介する。
実際どうなのかはわからないが、少なくともアドリアノと比較しても位は下ではない…とバーナは考えた。

「な…あのラスブロスの…。」

一応の効果はあったらしい。
やはりこのルーイガルドではラスブロスの名は…少なくとも軍人にとっては効き目がある。

「ところで…此処はガルーダ方面隊作戦参謀のライア将軍の部屋のはずだが…。」

作戦参謀…ライアが将軍だとはわかっていたが、ガルーダで作戦を立案する立場であったとは今初めて聞かされた。
なるほど、ガルーダでの戦いに過剰に反応する訳だ…とバーナは昨日の会話をいて思い返す。

「ライアなら奥で寝ているぞ…何か伝言があるなら伝えておこう。」
「な…なんだとっ…!!」

バーナは軽く言ったつもりだったが、その一言に対するアドリアノの反応がおかしい事はすぐに気がついた。
まだ自分の脳は目覚めていないのか…何か変な事を言ったのかと首をかしげるバーナ。
表情からしてアドリアノがまた怒鳴りだすかと思われたが…アドリアノの表情がまた変わっていくのが見えた。
どちらかと言えば脱力しているような感じだ。

「貴様…一体…何者なのだ…。」

後ずさりするアドリアノ、声のトーンもかなりダウンしている。

「だから言っている…シャクティアナ帝国の…。」

どうやら気が動転しているアドリアノにあえて苛立ちをみせながら応えるバーナ。
バーナが言い終わる前にアドリアノはバーナにすっかり小さくなった背中を向け廊下をとぼとぼと歩きだす。

「昨日到着したばかりの男が…なぜ…あの気の強いライアと一緒に…信じられん…。」

基本的にガードが固いライアが男を部屋に呼んで一晩を明かすなど考えられない事だった。
しかも会ったばかりの男を招くなど…。
廊下の角を曲がり姿が完全に見えなくなったアドリアノを見送ったバーナは扉を静かに閉め、まだ良く眠っているライアの傍による。

「なるほど…司令みずから将軍の部屋へ足を運ぶ…そういうことか。」

アドリアノの行動や態度をから察するところ、おそらくライアに気があるのだと理解するバーナ。
静かな寝息を立てているライアを起こすまいと、足音を立てずに窓際まで進み静かにカーテンを開けた。
快晴の空…街は賑わっていた。

「う…うーん…朝か…。」

眩しさを感じたのか、そこでライアが目を覚ました。
ゆっくりと身体を起こし、バーナの方を向く。

「バーナ将軍…おはようございます…ゆっくり眠れましたか?」
「ああ…お前ほどでは無いがな。」

苦笑交じりに返すバーナの言葉にライアも笑みを浮かべた。
ベッドから降りるとバーナの方に歩み寄り、一緒に窓から外を眺める。

「やはり副帝都だけあって活気があるな…。」
「そうです…私の大好きな街…此処が戦場になるなら…この街を全力で守りぬいて見せます。」

決意を固めるライア、ガルーダが戦場になる事を想定したその言葉にバーナもライアの覚悟を感じ取る。
ライアのそのガルーダを守りたいという気持ち…自分に預けてみろと言った自身の言葉を思い出すバーナ。
その決意を受け止められる活躍をせねばなるまいと、バーナ自信も気を引き締める。
互いに頷く…昨日知り合ったばかりの男女とは思えない二人である。

「ああ…そういえば…此処の指令官がお前を訪ねてきていたぞ。」

ライアの顔を見ているとふと思い出したアドリアノの小さくなった背中…アドリアノの言葉から察すると、何か約束事でもあったのだろう。

「………ハハ。」

引きつるライアの表情…何か大事な用だったかと苦笑いを浮かべるバーナ。
すぐさまライアが制服に身を通し、髪を整え始める。

「これからの戦略に関する会議が…私とした事が寝過ごすなんてっ!」
「なるほど…これは懲罰物だな…。」

男のせいで遅れましただなどと言い訳できるはずも無く、とにかく急いで支度するライア。
まだ間に合う…その一心だった。

「将軍は出られないのですか?」

落ち着き払うバーナの姿、階級的にはシャクティアナのトップであるはずのバーナならば出て当然だと思っていたが…。

「作戦はイルザに任せている…今回はイルザの力量を見定めるのも俺の役目の一つだからな…少し遅れてから行こう。」

昨日ベルトと共に近隣一帯を案内したシャクティアナの将軍…そういえば親衛隊を名乗っていた。
バーナとは同僚なのだ…羨ましい…本気でそう考えているのはなぜだろう。

「そうですか…ガルーダを戦場にするとおっしゃるのなら是非ともその中身を議論してみたいものですね。」

装飾品まできっちりと装備し、完全に準備が整ったライア…急いで扉を開け、部屋を飛び出す。
そして一人残されたバーナの方を振り返り敬礼をする。

「部屋の物は自由に使っていただいて構いません、食事も好きなものを取って下さい…では!」

そして廊下を軽やかなリズムで駆け出して行った…。
昨日に比べると随分気が楽になっているように見えたライア…バーナからすればひとまず安心したといったところである。
はじめて出会ったときは真面目そうな堅物のイメージだったが、意外と明るい性格なのだと感じた。

「さて…俺も部隊に戻るか…。」

カーゴの上に残っていたパンをひとカジリして、のそのそと部屋を後にするバーナ、振り返りライアの部屋番号を確認する。
また来る事になるのか…これが最後なのか…静かにドアを閉じた。

「しかし…この国の食い物は不味いな…。」

日は高く、冬の厳しい空気が吹き込む…。
後に冬の嵐と呼ばれる連合軍の攻撃が始まろうとしていた…。
 

ガルーダ戦記 第三話

 投稿者:イルザ  投稿日:2010年12月19日(日)11時36分41秒
  「バーナ将軍…まだ城内の視察をなさっていらっしゃるのですか?」
「お前は…確かベルトと言う将軍と一緒に居た…ここの人間だったな。」

自室に戻ろうとしたライアとすれ違ったのはシャクティアナ帝国親衛隊であるという援軍の将、バーナだった。
昼に出会ったときは城内を見て周るといって別れたのだが…。

「は…ガルーダで将軍職を務めさせていただいているライアと申します。」
「そうか…ライア…実はその見回りに時間を掛けすぎてしまってな…食事を注文するのを忘れていて今から何か物色しに行く所だ。」

士官には食べたいものを事前に注文しておく決まりになっていたのだが、その決まりをすっかり忘れていたのだ。
昼にガルーダに到着してバタバタしていたので昼食を抜いていたバーナにとって流石にそれは辛く、なんでも良いから腹に入れておこうという所であった。

「そうですか…なんでしたら私の部屋にいらっしゃいませんか?ちょっとした食べ物ぐらいならありますが…。」

この二人の関係はこの一言から始まった…。
人の出会いと言うのは本当に偶然がいくつも重なって起こるものである。

「そうか、ではありがたく世話になるとしよう。」

なぜそんな事を口走ったのかわからない…自分の部屋に人を招くという事は今までほとんど無かったのだが、先ほどのアドリアノとの会話の直後だったからなのだろうか…そんな事を考えつつもライアはバーナの前を歩き、自分の部屋へと案内する。
何を話せば良いのか全く何も思い浮かばないまま、一直線に自室へと向かうライアの後を、こちらも何も口を開かないバーナであった。
階段を上がり続け、最上階まで上がると士官部屋が並ぶ区域まで辿り着く…そしてライアの部屋の前に到着し、ライアがドアノブに手を掛けた。

「ど、どうぞ…。」

なぜか動揺していた。
それを悟られまいと普段どおりに振舞うつもりであったのだが…。

「どうした?声が震えているぞ?」

あっさりと気取られてしまった。

「いえ…なんでも…。」

先にバーナを入れるつもりだったのだが、動揺を知られたくないためにライアが先に入りバーナを促した。
バーナが部屋の中央まで行ったところで静かにドアを閉めた。
一通り部屋を見渡すと、バーナはいくつかある椅子の中で外を眺められる窓側の席に腰を下ろす。
城塞都市とは言え、大きな街なので夜景はなかなか美しい。

「何か飲み物をお持ちします…何がよろしいでしょう?」

ライアの問いかけにバーナはじっと外の景色を眺めたまま動かない。
外で何か起こってるのかとライアもバーナの背後に回り同じ方向を覗くが…特に変わった様子は無かった。

「美しい街だ…此処が戦場になるのか…。」

腕と足を組みソファに座るバーナの横顔…屈強の戦士とは思えない…綺麗だと素直に感じた。
戦場に立つ男でもこんな男が居るのかと少しほっとしたライアだったが、それ以上にバーナの言葉に驚く。

「ガルーダが戦場になるとは?」

ガルーダは確かに城塞都市ではあるが、副帝都でもある…重要な場所だ。
此処はあくまでも前線基地であって、ライアはガルーダまで敵を越させないような作戦を立てるつもりでいたのだ。

「我がシャクティアナ軍の作戦参謀…イルザはガルーダまで侵略軍をおびき寄せ、そして決着を付けたいそうだ。」

ガルーダまでの道のりには幾つもの街や村がある。
ガルーダまでおびき寄せるという事はその道のりにある地域を捨てるという事に相違ない。

「そんな…私は納得できない…同意しかねますっ!」

先ほどまでおどおどしているように見えたライアの表情が明らかに変わった。

「そうだな…この国の者の心情はわかっているつもりだ…だが俺はシャクティアナ帝王親衛隊の幹部…帝王の名を後ろ盾にこの国をシャクティアナの思い通りに動かすのが今回の俺の使命だ。」

帝王が新参者のイルザの実力をこの戦いで試そうというところで、イルザの目付け役として共にやってきたバーナ。
要するに皆がイルザの指示に従うように睨みを利かせ、力添えをするのが役目である。

「それが貴方の任務でも…私は…。」

生まれ故郷のガルーダを主戦場にするなど納得できない。
バーナはライアがそこまでガルーダに思い入れがあるとは知るはずも無い、しかしライアの真剣な眼差しに何かを感じ取ったらしい。

「敵の力は強大だ…お前はガルーダの事を強く思っているようだが、この国の事を思うならまずは戦いに勝利する事だ…個人の感情は捨てろ。」
「あ………。」

軍人に個人の感情などは邪魔な物であるはずなのに、相手に感づかれるほど自分が感情をむき出しにしていたとは…情けなく思うライアであった。
厳しい言葉であったが正論だったバーナの一言にライアは返す言葉が無かった。
立ったまま静かに頷くライア、それを深く椅子に座るバーナが見上げる。

「そうだな…ガルーダを守りたいと言うその気持ち…俺に預けてみないか?」
「なっ…。」

バーナがライアの手を取り立ち上がった。
ライアにとって自分のすぐ目の前に立つバーナは相当大きく見える。
そして自分の手を握り締めるバーナの手は恐ろしく冷たかった…。

「そう…個人の感情は抑えるべきだが…捨てられるものではない、守りたいものがあるから人は戦う…ひとまずその気持ち俺に預けておけ。」

俺に預けてみないか…迷える自分が誰かに求めていた一つの言葉だったのかも知れない。
人を頼りたい…支えが欲しい…だがライアは心の何処かで自分の知らない何かに救いを求めていた。

「私は…生まれ故郷が戦火に巻き込まれようとしている事…自分が軍人である事と…自分が女である事…迷っています…。」
「迷い?」

なにやら悩んでいるなとは感じて、少しでも気を楽にしてやろうと思っただけで掛けた言葉だったのだが…自分の言葉がライアの複雑な心境に触れてしまったのだとそこで理解した。

「本当は故郷の危機に帝都から駆けつけたのでは無いのです…ただ帝都で色々とあって…理由を付けて帝都から逃げ帰って…そうしたら今度はガルーダが戦場になるだなんて…どうにかなりそうです…。」

帝都で何があったのかまではわからなかったが、その言葉と俯くライアを見ると大体の事は察しがついた。
とにかくライアは辛い時期なのだと…悩み苦しんでいるのだと…。

「そうか…お前が悩みを打ち明けると言う事は俺に救いを求めているという事だな。」
「え………そ、そんなつもりでは!」

頼りたい…だが会ったばかりの他国の者である。
頼れるはずも無い…。
ライアは否定するが、氷のような冷たい眼差しのバーナには心まで見透かされているかのようだった。

「俺でよければいつでも相談に乗ろう…ライア…。」

ライアの両肩を掴みライアの顔を覗き込むようにしながらバーナが言ったその言葉…将軍とではなく、自分の名で呼んでくれた事が嬉しかった…そして確信した。
自分は待っていたのだ…心の少しでももたれ掛かることが出来る相手を。

「はい…これからもよろしくお願いします…将軍。」

ふっと笑みを見せるライアの表情にバーナも笑みを返す。

「そうかしこまらなくて良い、とりあえず食い物を頼む…これから色々あるだろうが、まずは食うことだ…今を生きれぬ者に明日は無い。」

そう切り出すと自分で食事をテーブルの上に並べ始めるバーナ。

「戦いの前の最後の晩餐…そんな気分で今宵はとことんやるか。」
「はい…フフ…。」

ワイングラスをライアに向かって差し出すバーナ、注いでくれとライアを促す。
ライアが注ぎ終わると今度はバーナがライアのグラスに酒を注ぐ。
そして互いのグラスを合わせると一気に酒を飲み干した。

本格的に戦いが始まる最後の夜…ライアはまさかこんな夜を過ごす事になるとは想像もしていなかった。
たった一夜…ライアが女として過ごした夜…連合軍との戦いは目前に迫っていた。
 

ガルーダ戦記 第二話

 投稿者:イルザ  投稿日:2010年12月19日(日)11時33分47秒
  「まだ見たい気になるところはありました?」
「いや…お前の案内はなかなかツボを抑えていたぞ。」
「そうですか、そりゃ良かった…本当なら観光地も案内したいところなんですがね。」
「………うむ。」

同じ馬に跨る二人の男女、鎧姿の長身ベルトとその前に座るイルザである。
イルザの要望に答える形で実現したガルーダの地域の下調べだったのだが、ベルトがあらかじめ考えていた要所を周りきりガルーダへと帰還してきたのだ。

「なにか浮かない顔ですが…?」

2人が乗る馬と並ぶもう一頭の馬…ライアが乗っている。
なにやら考え込んでいるイルザの横顔を見てライアが真意を探ろうとする…ライアは戦士ではなく軍略家であり、今回はアドリアノの元で作戦を立案する立場だった。
ガルーダを初めて見た者の感想を聞きたかったのだが…。

「ああ…色々細かい事ばかりなのだが…一番気になったのはガルーダの周囲の川が…いや…まさかな…それは無いか…うむ。」

余計な心配を掛けまいと笑みを浮かべるイルザであったが、ライアにとっては余計に気になってしまう。
しかし立場は相手の方が上なのでそれ以上聞くことは無く、そうですかと頷いてみせた。

「さて、ガルーダの門が見えましたよ、早く帰ってメシにしましょう。」

馬にもう一踏ん張りしてもらおうと馬の腹をポンと蹴る。
馬はそれに応え、ガルーダの門へと一気に加速し、そのまま城門を潜り抜けた。
ライアがそれに続き、門を通り抜けると巨大な門は轟音とともに閉じられていった。

「お疲れ様でした…今日は宿舎に戻ってゆっくりと休んでください。」
「ああ、そうさせてもらうかな…」

ベルトが素早く馬から降りると、後から降りようとするイルザの手助けをする。
初めて出会った時にイルザが馬に乗せてくれと手を差し出してきたが、勘違いして握手したのを思い出したのだ。

「どうです?」
「やるじゃないか、学習したな。」

汚名返上したと誇らしげなベルトに笑みを向けるイルザ、ベルトは気を良くしたのか今度はライアの方に駆け寄る。
そして同じように下馬の手助けをするベルトの助けを素直に受けるライアだったが、表情は浮かなかった。

「久々の故郷はどうだった…ライア?」
「ああ…懐かしいものばかりだった…本当に良かった。」

ベルトに笑みを見せるライアだったが、作り笑顔だとすぐに感づくベルト、ライアの両肩を掴み、ライアの顔を覗き込む。

「なにか迷っているな…戦いに集中できるようにしておけよ、時間はもう残り少ないからな。」

そう言うと、2頭の馬の手綱を取って馬を引っ張っていくベルト…ライアとイルザはその背中を見送る。
意外と勘の鋭いベルトだが、ライアの真意までは探ろうとはしなかった。
戦いとは関係ない個人的な悩みだという事だと推測したので、ライア自身に迷いを振り払ってもらうしかないのだ。
俯きながら壁にもたれかかるライア、何かを考えているようである。

「ライア、ちょっと来い。」

慌てて走ってきたのか、息を乱しながら二人の方へ駆け寄る男が一人、ガルーダ方面司令官・アドリアノである。
その表情を見たイルザが何かあると踏んで二人に気づかれないように柱の影に隠れる。

「お前に帰還せよと帝都からの使いが来ている…。」
「………そうですか。」

ライアが溜息をもらしながらうな垂れる。
わかっていた。
直ぐに使いが来るだろうとは思っていたが、自分が想像していた以上に早かったのだ。

「どうして黙っていたんだ…軍幹部からの命令だぞ。」
「そうですか…私はお断りしたつもりなのですが…陛下は許してくれませんか…。」

さらに深い溜息を一つ。
皇帝という言葉にアドリアノも柱の影から様子を伺っているイルザも反応する。

「なにをやらかしたんだ?俺にも何か手伝えるかもしれん…言ってみろ。」

男を上げるチャンスだと、アドリアノが意気込む。
イルザはアドリアノにもっとライアの話を聞き出せと念力を送っている。

「実は…。」
「ん?」

アドリアノから視線を外すライア、そのままアドリアノに背を向け、夕暮れに染まる空を見上げた。
沈みかける太陽と、うっすらと浮かび始めた月が美しい。

「皇帝陛下の側室に入れと…陛下直々に私に声が掛かったのですが…。」
「………な…。」

ライアの意外な答えに言葉を失うアドリアノであった。
帝都でその才能をいかんなく発揮してきたライア、その噂は皇帝にもすぐ伝わっていた。
見た目も良いしすぐに気に入られたのだが…まさか側室に入れと言われるとは思っていなかったライアである。
出世コースを歩み始めたアドリアノにとっても、皇帝が相手とは戦う前から白旗を揚げなければならない相手である。

「そうか…そうなのか…。」

大きな口を叩いてしまった手前、どうライアに声を掛けて良いものか迷うアドリアノにイルザは心の中でエールを送る。

「私はまだ身体が動く内は陛下の為、帝国の為に戦い続けたいと断りを入れておいたのですが…。」

そのライアの言葉にピンと来たアドリアノ、大きく頷いて見せる。

「侵略軍との戦いで大きな戦果を上げればきっと陛下もお前の言葉を聞き入れてくださるはずだ…俺からも陛下に意見させてもらえる機会もあるだろうしな。」

いくら相手が陛下だろうが、帝王だろうが、ライアだけは渡すわけにはいかない…それが本心である。

「そうですね…その時は是非とも頼りにさせてもらいます。」
「ああ…その為にも次の戦い…俺に力を貸してくれ…ライア。」

ライアの肩を叩くアドリアノ、軽い足取りでその場を後にした。
イルザも気配を消しながらその場を後にする…口元には笑みが浮かんでいた。
そんな二人の心情を知らぬライアは再び空を見上げる。

「私は…女として生きる事は出来ない…。」

軍人として生きてきたライア…自分が女であると言う事をここまで意識した事は無かった。
女という肩書きは軍に入隊したときに捨てたのだ。

いつの間にか太陽は沈み、そして月が本来の明るさで輝いていた。
ライアは星空に向かって今回の戦いでの活躍を誓いその場を後にした…。
 

ガルーダ戦記 第一話

 投稿者:イルザ  投稿日:2010年10月27日(水)00時56分59秒
  「ベルト、この忙しいのに一人で外出か?」
「ああ、さっきシャクティアナの援軍が到着しただろう?で、その援軍のお偉いさんがガルーダの城の周囲を見て回りたいんだと。」
「ほう…熱心な事だ。」
「で、俺がアドリアノに案内役を命じられた…と言うわけだ。」

ここはビアスコア帝国・副帝都ガルーダの4つ城門の一つ…北門に通じる通路…。
この物語の主人公であるライアが、幼馴染でありガルーダの将軍であるベルトを見かけて声を掛けたのだ。

「こう見えても俺だって忙しい立場なんだが…お、来たな。」

白銀の鎧…黒のロングヘアー…長身の男が静かに二人の方に歩み寄る。
互いの手が届く距離まで近づいた所で黒髪の男が小さく頷く…端整な顔立ちだが、眼光は鋭かった。

「シャクティアナ帝国帝王親衛隊のバーナだ…よろしく頼む。」
「ビアスコア帝国の将軍のベルトです…生まれも育ちもガルーダですから、案内は任せて置いてください、さぁ行きましょう。」

連合軍がビアスコアの領土に進入しつつある今、時間はいくらあっても足りない…ベルトはバーナと名乗る男を促しつつ、頭の中で案内するポイントを整理する。
短時間で要所を周る為に用意しておいたのが早馬である。
柱の影で待機していた兵士に合図を送ると、その兵士が手綱を引きながら2頭の馬を3人の元へと運んできた。

「すまんが…案内を依頼した張本人は少し前に一人でこの門を出て行ったらしい…。」

時間が惜しいのは案内される方も同じ…ベルトが指定した待ち合わせの時間まで待てず、一人で飛び出していったのだ。

「部下にその事を言伝していたようなのだが…俺が直々に謝罪しに来た…歩きなのでまだそれほど遠くまでは言っていないはずだ…すまないが、後を追いかけてやってくれないか。」

北門から続く草原の一本道…その先は森林と山岳まで続いている。
道に迷う事はないだろうが、歩きで行っているとなると、ベルトが馬二匹を連れて行かねばならないと言う事だ。

「………シャクティアナの将軍って堅いイメージがあったのですが、思っていたよりも自由人なのですね。」

ライアが長身のバーナを見上げる。

「色んな人間が居るさ…そうでなければ面白くないだろう?」

バーナが笑みを浮かべながら二人に背を向ける。

「栗色の髪に魔族の耳の旅装束の女…追いかけてやってくれ…俺は城壁の内側を見て周っておこう。」

そう言うと周りを見渡しながらバーナは引き返していく。

「仕方ないな…俺は後を追いかける…お前はこの馬を小屋に戻しておいてくれ。」

ベルトが一頭の馬の手綱をライアに取らせてからもう一頭の馬の背に飛び乗る。
少し馬が暴れたがベルトの手綱捌きはなかなかのものだった。

「私も行こう…久しぶりの故郷だしな…ここら辺りの地形をもう一度頭に叩き込んでおかなくては…な。」

ライアがやさしく馬に跨り、馬の首筋を軽く撫でてやる。

「この忙しいのに将軍が二人も不在になるなど…後でアドリアノに怒られるだろうな…ハハ。」

もはや出発する事を前提とする事となってしまっているライアの言葉に苦笑いを浮かべるベルト、戦いが始まればこうして友人として接する機会も失われるだろう…一緒に外に出れることが嬉しかった。

「それもいいだろう…戦闘が始まればここらもどうなるかわからん、俺たちが生まれ育ったこの景色を目に焼き付けておくのも良かろう。」

互いに頷くと、馬を城外へと走らせる。
久しぶりに並んで走る二人だったが、まるで互いの馬術を競い合うかのような凄まじいスピードである。

「まだこの道を覚えていたかっ!」

ベルトが横一線に並ぶライアに感嘆の声を上げる。
昔アドリアノと3人でこの道を良く走った…ライアのコース取りは昔と変わりない。
道を完璧に覚えていなければ出来ない無駄の無いコース取りだった。

「当たり前だっ!」

風が気持ちよかった。
故郷を思いながら帝都へと旅立ったライアだったが、帝都では仕事に追われ、故郷を振り返る暇も与えられなかった。
そんな中で今回の六界連合軍の侵攻の知らせを聞き、自ら前線へ加わる事を志願したのだ。
懐かしい故郷で旧友と出会い笑いあう…それが叶うのはほんの少しの時間だけと分かっているが、それで良かった。

「おっ、あれじゃないか?」

ベルトが前方に見える旅装束の後姿を指差す。
栗色の髪…特徴的な魔族の耳…恐らく間違いなかった。
ライアはもう少しこのまま走っていたかったのだが、任務は最優先されなければならない。
馬をその旅装束の横でとまるよう徐々に減速させると、そのまま横に着けた。

「ビアスコア帝国の者ですが…貴女は…。」

ベルトが恐る恐る女に尋ねる。
先ほどの堂々とした鎧姿のバーナとは全く違う雰囲気の旅装束…普段着ではないかとさえ思われる出で立ちである。
人違いを心配したベルトだったが…。

「案内役か?ちょうど良い、此処からキツイ坂のようだからな。」

ベルトが言い終わる前に女が振り向く。
見た目はライアよりも少し若い感じがしたが、魔族というのは何歳生きるか良く判らないものだ。

「どうも、ベルトです…こっちはライアと言いまして、二人ともガルーダで生まれのビアスコア帝国の将軍です。」

見た目が自分よりも若い女に対して少しくだけた感じの言葉を使ってみるベルト、女の表情を伺う。
その辺りの事を気にする女なのかどうか試しているのだ。

「私はシャクティアナ帝国親衛隊のイルザだ…よろしく頼む。」

イルザと名乗る女は口元に笑みを浮かべながら2人の方へと歩み寄った。
どうやら上下関係という物にはあまり関心が無いらしく、ベルトも安堵の表情を浮かべる。
イルザは馬上のベルトの足元まで来ると、ベルトに向かって手を伸ばす。

「どうも。」
「違う…状況をみて機転を気かさんか。」

握手を求めていると勘違いしたベルトであったが、イルザはベルトの腕を掴みぐいぐいと引っ張る。

「ああ…、俺の馬で良いんですか?ライアの方が女性同士でよろしいかと?」

イルザが馬に乗りたがっているのだと気がついたベルトがイルザの手を取る前にライアの方に視線を配る。

「女としては強い男に守ってもらいたいもの…そうは思わんか、ライア?」
「あ…ハッ!」

いきなり話を振りかけられたライアが驚いた様子で声を上げる。
ベルトは困った表情をみせ、イルザは鼻で笑った。

「帝王と呼ばれる男の親衛隊…それに私は貴国からすれば客人ではあるが、あまりかしこまらなくて良い…戦士は戦場にでれば上も下も無いのだからな。」

ベルトの腕をもう一度取り、馬上へと引き上げてもらうイルザ…ベルトの前に座る。
ライアは深い深呼吸をし、気持ちを落ち着かせた。

「さて、見晴らしの良い山岳地帯と、近辺の兵を隠せそうな所を案内してもらおうか。」
「了解!ライア、しっかり着いてこいよ!!」
「ああ…。」

中々気の合っているらしい二人を少し羨ましそうに見つめるライア…自然な感じが楽しそうに見えた。

「私だって…。」
「ん?なにか言ったか?」
「い、いや…何も…。」

自分の意思とは関係なく呟いていた。
それをベルトに聞かれた訳なのだが、ライアが手を横に振り、何も言っていないと慌てて否定する。

「そうか?なら良いが…そろそろ行くぞ。」
「ああ、後ろから追いかける。」

ベルトが頷くと、馬の腹を軽く蹴り出発の合図を出す。
馬は坂道だろうがお構いなしに一気にスピードを上げた。

「強い男に守ってもらいたい…でも…守ってもらいたい男を選ぶ権利だってあるはず…なのに…私は…。」

もう二人を乗せた馬は遠ざかっていた。
空を見上げるライア…まだ日は高かい…暖かい太陽の光と、心地よい風が肌に触れる。
溜息を一つ零してから、また大きく深呼吸…そして自分に何かを言い聞かせるように大きく頷いてから手綱を大きく引いた。
馬は大きく仰け反ってから一気に坂道を掛けていく…。

六界連合軍現る…その知らせが届くまでもう少し…。
ライアの心は乱れていた…(続く)
 

ガルーダ戦記 序章

 投稿者:イルザ  投稿日:2010年10月15日(金)23時46分29秒
  「久しぶりだな!!元気そうで何よりだ…だがどうして此処に?」
「うむ、帝都からの増援部隊を率いて来た…さらにフェルトビーン・シャクティアナの2国からの援軍も合流だ。」
「本当か…これで侵略軍と正面から戦えるな…。」

鎧姿の二人の男女がテーブルを挟み、飲み物が入ったカップを手にしつつ話し合う。
ここはビアスコア帝国の副帝都ガルーダの軍事施設の一室…言うまでも無く二人はこの国の軍人である。

「侵略軍の数はわれ等を凌駕している…しかし援軍が来れば…数の差がなくなれば後は覚悟の差だけだ。」

そう意気込むのは青い鎧の男…カップの中身を全て飲み干し乱暴にテーブルに置く。

「ベルト…いつもの根性論が今回の相手に通用するとは思えない…冷静な対応が必要だ。」

そう男を諭す赤い鎧の女…男が置いたカップを手に取り立ち上がり、部屋の片隅にある流し台へと向かう。
ベルトと呼ばれた男も後を追うように立ち上がり、そして二人分のカップを洗う女性の肩に手を置き耳元で呟く。

「その為にお前が来たんだろう?しっかりと俺を使いこなしてくれ。」
「相変わらずだな…その人任せな性格は。」

互いに笑みを浮かべる。
ただ仲が良いのではない、信頼しあっているのだ。
そんな声を聞きつけてか、扉をゆっくりと開けて一人の男が部屋に入ってくる。

「探したぞベルト…と…お前はライア…か?」

ライアと呼ばれた女性が振り向く、炎のように赤いストレートヘア…背中越しでも見間違えるはずは無かった。

「アドリアノ…久しぶりに3人そろったな…戦時中というのが残念だが。」

ベルトは元々ドアの方を向いてライアと喋っていた。
アドリアノと呼んだ男の方へ手で挨拶をする。

「ああ、しかしお互い進んだ道の中でこうして再会できるのは…このガルーダに危機が迫ったときだけなのかもしれん…。」
「そうだな…。」

アドリアノがライアを見下ろす。
やはり女だけあって、線が細い。
ライアはアドリアノに視線を合わせる事無く、黙々とカップを拭いていた。

「さて、ベルト…お前は若い兵士達の様子を見てやってくれ…皆今回の戦いには不安を抱いている。」
「わかった…少し喝を入れてきてやろう。」

互いに笑みを浮かべる。
この男達も信頼しあっているのだ。
ベルトは早々に部屋を後にする。

「久しぶりだな…ライア…援軍にお前が来てくれて本当に心強く思う。」

言いながらも手にしていた地図をテーブルの上に広げるアドリアノ。
ライアにとっては懐かしい土地の名前が目に入ってくる。

「ありがとうございます、アドリアノ司令。」

地図が広げられたテーブルの前に立つアドリアノはライアをその前の椅子に座るよう促した。
軍人らしい真っ直ぐな姿勢で着席するライア、アドリアノはそのライアの横までやってきてテーブルに腰を下ろし、ライアを見下ろす。

「ライア…いままでのようにアドリアノで良い。」

今までのように…。
ライアとアドリアノ…そしてベルト…ガルーダの街で育った幼馴染である。
互いに軍人の家系に生まれた者同士、幼少の頃から優秀な軍人を目指して切磋琢磨しあってきた仲だった。
しかし数年前に転機は訪れた…。
ライアが本国勤務となり、ガルーダを離れる事となったのだ。
そしてその後アドリアノが出世コースに乗る事に成功し、ガルーダ近辺のエリアを統括する将軍…という地位を得た事によって、3人は互いに別々の道を歩む事となったのである。

「いえ…立場は立場です…兵士達に示しがつきませんので…。」
「………そうか、兵士の居ない場所だけでもと思ったんだがな…。」

アドリアノはライアの事を好いていた…初めて会った頃からその気持ちは変わらない。
3人の中でも姉のような存在であるライアに憧れのような物を感じていた。
やがて小さかった背はライアを追い越し、虚弱だった身体は大きくなり、そして出世した。
自分はライアを迎えに行ける男に成長した…何度も自分の気持ちを伝えようとしたのだが、肝心なところで臆病な所は昔から変わらずライアに思いを伝える事は出来ないでいた。

「もうすぐ援軍が到着する…そして敵軍も俺の管轄領土へと侵入してくる。」
「はっ…。」

自分の一世一代の大仕事の前に思いを伝えようと…意気込んでやってきたアドリアノだったが…そんなアドリアノには目もくれずテーブルに広げられていた地図を睨むライア。
その真剣な眼差しを見せるライアの横顔にアドリアノの計画は水泡に帰した。

「お前は俺よりも優れた戦略眼を持っている…戦場での活躍…期待しているぞ。」
「はっ!必ずやご期待にこたえて見せましょう。」

アドリアノの意図とは別にライアが話を切り上げようと席を立ちアドリアノに敬礼をする。
アドリアノが頷くと、ライアは軍人らしい動きでターンをし、ドアから静かに部屋をでる。
本当なら肩に手を回して並んで歩きたいところだったが、ライアの背中を見送る事しかできない自分が歯がゆかった…。

「この戦い…俺は名を上げなければいけない…最大の危機は同時に最大のチャンスでもある…そう教えてくれたのは…ライア…お前だったな。」

地図を眺めながら呟くアドリアノ…ガルーダ周辺の自分の管轄の地形を記したものだ。
その地図にはもうすぐ六界連合軍の現在地が記される事になるだろう。
ビアスコア帝国最大の戦いであるガルーダの戦い…それはもう目前まで迫っていた…。

……………

○登場人物○

・ライア    ビアスコア帝国本国で将軍を務めている。戦闘能力はさほど無く、戦略・戦術に長けている才女。
・アドリアノ  ガルーダ周辺地域を統括管理する将軍。ライアに好意を抱いている。
・ベルト    ガルーダの猛将、熱血漢で、兵士達からの信頼が厚い。
 

新企画ですので恒例の挨拶まわりをっ!

 投稿者:ルティエの親  投稿日:2010年 7月23日(金)00時43分37秒
  こんばんわ、ルティエの親の瑞鶴です。
今回はルティエではなく、ラ・ディアス帝国のホルスで参加させて頂いております!
性格は全然違うものになりますが、本編とは似て非なる他人、ということで。。。

久しぶりの企画なので、皆で盛り上げていきましょう!!!
宜しくお願いします^^
 

小ネタギャグ劇場

 投稿者:RAM  投稿日:2010年 7月 3日(土)01時52分0秒
編集済
  ※始めに。
このSSは、物語本編のシーンをギャグ風にしたものです。
一部のキャラは本編とは異なる性格になってますが、ご理解の程よろしくお願い致します。


『胸倉がないから』(騎将姫)

 ティアナ達の潜入が発覚後。

イクルテイ「おいシオンッ!!何でティアナを取り押さえなかった!!この失態、どう責任取るっていうんだっ!!」

シオン「私は……私は……」

イクルテイ「このっ」

シオン「……っ!」

イクルテイ「……お前の服には掴む胸倉がねぇ……ま、まぁ……仕方がねぇよな」

シオン「……イクルテイ……」

イクルテイ「ま、しばらくは俺達に任せて、少し休んでろよ」

シオン「……すまない。けど……イクルテイ、できればいいかげん手を放してくれないか? その掴んでものから(怒)」

イクルテイ「あ……(冷や汗)」

イクルテイがどこを掴んでいたのかは、ご想像にお任せします。



『芝居』(燃ゆる馬蹄)

 ミリアス攻略中、リオンが裏切りサンド大ピンチ!

ガルダザール「さて、この将をどうしてくれようか」

リオン「体力はありそうだから、奴隷にするさね?あははっ」

サンド「リオン……貴様という奴は……」

サアヌ「ちょっと待ったぁ!」

リヴォル将軍「なっ?!…貴様!!傭兵かっ!!」

ダイルーガ「はい、あんたも動かない動かない」

レイア「さて、外でうちの将軍が懸念してた通りの展開になってたな、初期段階で作戦がうまくいかなくなれば、姐さんはよからぬ事を考えるって……だから、こちらで第二作戦をとらせてもらったぜ」

リオン「ちっ……あたし達に内通の芝居までさせておいて、そのくせ作戦の全てを教えてくれていなかったっていうのかい、意地が悪いねぇ、あの子も、ああいうタイプは徹底的に苛めてやりたいさね」

Sモードに入ってるリオンと、その足下に転がってる緊縛サンド。

サアヌ「……SM……?」

レイア「確かによからぬ事を考えてたな」

ダイルーガ「というか、内通の芝居って、まさかそういう芝居を……」

サンド「違ーう!!」



『キリカ、ピンチ!』(翼の君臨者)

 エルに呼び出されたキリカ。

ミナ「……………………」

キリカ「(……私の背後に……それに、全ての扉とカーテンが締め切られている)」

エル「ふふ……」

キリカ「……はッ……!」

エル「ここは光も届かない地の底。ここで何が行われても、誰も知る事はありません」

キリカ「エ、エル様?」

ミナ「さ…キリカ将軍」

キリカ「ミ、ミナ将軍、後から…何を……あぁ……」

エル「ふふふ……」

………
……


兵士A「てな事が、部屋の中で繰り広げられてると思っているんだけど、どう思う?」

兵士B「そうだな。酒でもかっくらって、さっさと寝て忘れろ」


―――――――――――――――
・あとがきみたいなもの。

一部キャラの親御様、ちょっと変な性格のキャラにしてしまった事をお許しください。

雑文・乱文・誤字・脱字はご容赦ください。
 

歴史に埋もれた者

 投稿者:ある後世の歴史家  投稿日:2010年 4月25日(日)01時53分31秒
   その内政能力は、諸国の王族・将軍・軍師達からも一目置かれていたかの自由傭兵サアヌと同等。
 外交能力は、一時期ザールック連合軍の盟主として諸外国に絶大な支配力を持っていたアーズ国の女帝アルスレーナをも上回る。
 魅力・カリスマ性は、この世界においてもっとも神に近いと畏怖される存在ガウデパ、ヴィルガードの二つの神座に並ぶほど。
 単騎・武勇は、様々な任務をこなして来たサアヌ傭兵団の軍師として活躍したマルキィをも凌駕するという。
 統率力は、魔王ガルゾーマの副官としてその内政手腕を振るったロアリーにも匹敵する。
 そしてその智謀能力は、名だたる軍師・策士たちすら考えつかなかった奇策「戦士ヴィルの魅力的な胸で敵をおびき寄せる」を提案したリーザスと肩を並べる程だという。

 これほどの逸材が何故歴史の表舞台に立つ事がなかったのかは分からない。
 仮にこの者が連合軍、或いは帝王軍の中枢に身を置いていたならば、歴史はまた違った結末を迎えていたかもしれない。

―――――――――――――――
休息所のキャラ紹介にインスパイアされて。
 

観戦者たちの語り場~妄想編~

 投稿者:DP応援者の一人  投稿日:2010年 2月21日(日)17時46分21秒
編集済
  パタックのスケベオヤジな話が、ひと段落するのを見計らって、ラインが声をかける。
「パタック、そろそろ話を戻していいかな?」
「ん? ああ、そうだな。酒が入っちまうと、下品な方に話が弾んじまう」
無精ひげの男パタックは悪い悪いと頭をかく。
「たしか、みず、キル、アン、カルとしゃべったから……次はサキだな」
「サキさんというと、ハルバートを持ってた人だっけ?」
「そう。その女だ」
出場者の一人、サキ。ハルバートを持っているが、攻撃系の法術を得意とする法術使いである。
「何気に8人の中じゃ、一番俺好みの選手だったりするんだよな」
パタックがにやけた顔で言う。
服装、威風堂々とした容姿は勿論、絶対領域に胸元といったところもポイントだ。
「もう、どういった活躍をするのか楽しみで楽しみで仕方ないわけよ」
大会での活躍は勿論、事前情報にもあった方の活躍も愉しみ。
「事前情報?」
「ああ、こっちの話こっちの話。あんまし気にするな」
「はぁ」
気にするなと言われると余計気になるのだが、とりあえずパタックの言葉に従う事にしたライン。
「この大会は攻撃手段は自由って事で、法術使いも多く参加しているんだ。もっとも、決勝に残った8人中、法術使いはサキとアンジェリナの二人だけだけどな」
アンジェリナが純粋な法術使いにカウントされるのかは、意見の分かれるところかもしれないが、多くの法術使いが出場しているという割には決勝トーナメントに勝ち上がったのは2人だけ。
「やっぱり出場しても、すぐに負けちゃうのかな? なんていうか法術使いって、体力的にひ弱っていうか、やわなイメージがあるから」
ラインが自分の感想を述べる。
「んー、それでも強力な攻撃法術や補助法術も使えるだろうし、体力的にやわと言ったって、町の外で山賊や魔物と戦ってる連中は、そこそこ体力はあると思うけどな」
そう言いながら、パタックはラインの身体を見る。
ぱっと見ても、身体を鍛えているようには見えない。重労働でもしたらすぐにへばりそうな感じだ。
「少なくとも、お前さんよりは体力あるだろうな」
パタックは意地悪っぽく笑う。
「そういうパタックはどうなのさ?」
ラインは少しむっとした口調で聞き返す。内心ではその通りだろうなぁと自覚しているが、言われていい気分はしない。
「俺はほれ。こう見えて、毎日運動は欠かしてないからな」
腕をまくって、逞しい筋肉を見せる。どうやら結構鍛えているようだ。
「男は強くなくっちゃ、生きてはいけないものなのさ」
賭け事の好きなパタックは、それが原因で望まぬ喧嘩を吹っかけられる事がある。それで自然と腕っ節が強くなったのだ。
「ま、法術使いだからって、やわでひ弱とは限らないぜ。事前情報じゃ、瑞樹ちゃんやキルスティの方が生命力が低かったしな」
「へえ、そうなんだ」
何でそんな事まで知っているのか、凄く気になるが深く考えてはいけない。
きっと、パタックの知り合いには情報通の知り合いでもいるのだろう。
「ま、何にせよだ。普段法術使いが戦う姿を見る機会はないからな。接近戦の苦手な法術使いが、戦士達を相手にどんな戦い方を見せてくれるのか、楽しみじゃねえか」
「そうだね」

「さて、戦士とくれば、リスティアだな」
「あの大剣を持った女戦士さんだね」
出場者の1人、リスティア。法術の刃を噴出させる大剣を持つ女戦士。
鎧を纏った姿は、戦場に立つ鋼の戦乙女のようだ。
「パッと見ただけだけど、8人の中だと、一番強そうに見えたなぁ」
ラインが感想を述べる。
あくまで第一印象でしかないが、リスティアは多くの戦場を戦い抜いた猛者というイメージがあった。
「まあな。ただ、人は見かけによらずって言うから、外見だけで誰が一番強いかなんて判断はできねえけどな」
因みに、独断と偏見で強そうに見える選手を選ぶとしたら、1番がリスティアで、2番はグリシア。3番はグリシアと僅差でサキといったところか。
「ま、それは置いといて、勇ましさもさることながら、胸鎧がナイスチックだよな」
リスティア自身は勿論だが、女性の身体の曲線美を損なわず、なおかつ魅力的に魅せるあの鎧のセンスは見事なものだとパタックは思った。
「パタックらしい感想だね」
ラインが苦笑を漏らす。
「でも、ああいう鎧って、作るのに手間がかかるみたいだよ」
「そうなのか?」
「そうらしいよ。人から聞いた話だけどね」
リスティアが身に着けているような鎧に限らず、女性の鎧というのは、作るのに手間がかかるという。
男性の場合、胸は平らなので、男性用の鎧を作るのはそれほど面倒ではない。
だが女性の場合、胸のふくらみや大きさも考慮して、立体感ある作りにしなければならない。それも装着者に合わせてだ。
布で出来た服ならば、布に伸縮性があるので誰でも着れるし、多少服のサイズが小さくてもなんとかなるが、金属や硬い皮で作られた鎧というのは、伸縮面で融通が利かない。
「だから身体に合う鎧が店に置かれていない時には、わざわざサイズを測って、鎧職人さんにオーダーメイドで鎧を作って貰うんだ」
簡単な鎧なら、止め金や紐を弄る事である程度調節できるが、やはり身体に合った鎧を着るのが一番だ。
なのでお金に余裕のある客は、男女問わずに店で売っているような量産品ではなく、直接鎧職人に自分の鎧を作ってもらうという。
「はあー、鎧ひとつでも、面倒なんだな」
「まあね。仮にオーダーメイドで鎧を作ってもらっても、女性の場合、まだ成長期の途中だと、胸が大きくなって、きつくなったりするから面倒なんだよ。予め成長分を計算して、余裕を持たせておいても、その計算通りに成長するとは限らないからね」
売る側としては、何度も鎧を買い換えて貰えるので嬉しい限りだが、客からすれば、壊れもしてない鎧を買い換えるのは、勿体無い気持ちだろうし、出費の面でも痛いところだ。
鎧を作る側からしても、その人のためだけに作った特別な鎧。長く使ってもらいたいと思うのが普通だろう。
「なるほどな」
腕を組んで静かに話を聞いていたパタックが、重々しく頷く。
「つまり、あの胸鎧の膨らみが、イコールリスティアの胸の大きさとは限らないという事か」
「は?」
ラインの目が点になる。
ただ鎧に関する知識を語っただけで、何故そういう方向に話が持っていかれるのだろうか?
「ふっ、人は外見だけじゃ判断できねえとはまさにこの事。俺とした事が迂闊だったぜ」
パタックはいつになく真剣な表情になり、難しく考え始める。
あまりに真剣な様子に、ラインも自然と緊張に身を固める。
パタックの表情は、いつになく真面目でとてもくだらない事を考えているようには思えないからだ。
「実はな。この大会の優勝者を賭ける他にもう一つ、別の賭けをしているんだ」
「別の賭け?」
「8人の女選手のバストの大きさ比べさ」
一気に緊張が崩壊したラインが、テーブルに突っ伏す。
だがパタックは真剣な表情を崩さない。
「大きさ順に1位から8位を完璧に予想するんだ。全部当たっていたら金が入る」
なんという賭けなのだろうとラインは思った。
おそらく本人達が知ったら、ただ激怒するくらいでは済まないだろう。
「着痩せの可能性は考えていたんだが、パッドや嘘乳の可能性は計算に入れていなかった。こいつは急いで予想を組み立て直す必要があるな」
賭けの締め切りは近い。ポケットから紙と筆を取り出すと、予想やら計算やらを始める。
「みずとキルは下の方で、事前情報も参考に…サキは大体……」
などと、何だかよく分からない事を口走りながら、紙に色々書き記していく。
そんなパタックを呆れたように眺めるライン。
しかし、呆れながらもパタックの立てる予想が気になってしまうのは、悲しき男の性なのだろうか?
(あ、けど、いったいどうやって答え合わせをするつもりなんだろ? まさか本人達に直接訊く訳にもいかないだろうし)
おそらく、本人達に訊いた時点で、良くて変質者呼ばわり。ボコボコにされ病院送りは覚悟の上で、最悪、墓場送りといったところだろうか。
いったい、どういう方法で確認するつもりなのか、気になるラインだった。


「……ふぅ」
「パタック、予想はもういいのかい?」
「ああ、色々考えてたらややこしくなってきたんで、後でする事にしたよ」
「そっか……」
何故か、少し残念な気持ちになるライン。どんな予想をするのか気になっていたのだろう。
「それよりも、本題の続きだ続き。次はグリシアだな」
「グリシアさんって言うと、長い刀を背負った…髪を後で束ねてる女性だね」
「そうだ」
身の丈ほどある長刀を背負った女剣士グリシア。着流しのような服を着た姿は、流れの女武芸者や女用心棒といった肩書きが似合いそうな、独特の雰囲気を感じさせる女性だ。
「独特な雰囲気は勿論だが、あのスリットも外しちゃならねえポイントの一つだな」
隠密に格闘家、法術士に軍師、戦士に騎馬民族の姫。戦乱に身を置く女性達の中には、スカートにスリットを入れてたり太ももを見せる衣装の女性が割かし多かった。
だが今回の出場者8人に中では、スリットを入れた女性は僅かに2人しかおらず、太ももまでとなると、グリシア1人のみである。
「太ももが見たいなら水着姿やレオタードの女を見ればいいじゃないかと思う奴もいるが、それは違う。分かってない奴の言い分だ。スカートに覆われた僅かな隙間から見えるからこそときめくんだ。想像してみろ。僅かに見え隠れする太ももの絵を! 彼女達が歩くたびにスリットの隙間が危なかしさ、見えそうで見えない、そのもどかしさが、より興奮をさそうだ!」
「そ、そうなんだ」
パタックの迫力に圧されるライン。
「勿論、みんながみんなスリットを入れれば良いという訳じゃあない。普通のスカートにスパッツ、レオタード。スリットにはない魅力と良さがそこにはある。一つの属性に集中させるんじゃダメだ。何事もバランスは大切なもんさ」
「その話は、また今度にしようよ。ね」
この辺りで止めておかないと、話が脱線しかねないので、ラインは強引に話を戻す。
「それよりも、あのグリシアさんって、何となく瑞樹さんと通じるものがあるような気がするんだけど、気のせいかな?」
「お前もそう思うか。なんつーか、あの二人って、文化的に通じるものがあるような…そんな感じがするんだよな」
ただの偶然かもしれないが、生まれた場所や育った環境に何か共通点があるのかもしれない。
「それに眼帯をしてたように見えたけど、目を怪我でもしたのかな?」
「かもしれねえな」
グリシアが普段何をしているのかは分からないが、大会に参加していることから、武芸者という事は想像はつく。
もしかしたら、普段は傭兵や冒険者として、アウトローな場所に身を置いているのかもしれない。
「普通に考えれば、荒事の最中に目を負傷したんだろうが、少し捻って、自分の目を奪った敵を探して放浪の旅を続ける女剣士ってのはどうだ?」
パタックが推測…というか妄想を述べる。
「その敵が大会に参加していると考えてこの大会に参加した。もしかしたら、他の7人の中に敵がいるのかもしれないな」
「人のプロフィールを勝手に作らない方がいいと思うけど」
「想像するのは勝手さ」
ラインの注意を一蹴して、各選手のプロフィールを予想して賭けるのも面白いかもしれないなと呟く。
グリシア本人からすれば、賭けの対象にされた上、変な想像されたりで、面白い話ではないだろうが。
「彼女の剣の上達を見て、自分を超えるのではと恐れた師匠が、修行中の事故に見せかけて片目を潰した。とか、右目と左目で瞳の色が違ってて、それを隠すために普段は眼帯をつけているとか、眼帯の下の目には、とんでもない秘密が隠されている可能性もあるな。たとえば、全てを見通す眼とか、相手を呪い殺す魔眼とか……」
「パタック…それって冗談なのか本気なのか……」
「魔眼とかは冗談だけどな。あ、もう一つ、ただのファッションっていう可能性もあるか」
「それは……ちょっと、ありそうかもしれないね」
この前、そんな理由で眼帯をしている少女が登場する物語の本で読んだことがある。正確にはただのファッションではなく、ちゃんとした理由があるのだが、詳しく語りだすと、大会とは全く関係ない話になるので、触れないでおく。
「何にせよ、あの眼帯には、グリシアの秘められた何かがあるのかもしれないな。運がよければトーナメント大会で、その秘密が明らかになるかもしれないぜ」
パタックは自信ありげに言い切る。
もっとも、武勇を競うトーナメント大会で、そのような機会があるのだろうか?
(それ以前に、あの眼帯にそこまでの秘密があるのかな?)
色々と突っ込みたい点があるが、ややこしくなりそうなので、あえて黙っておく事にするラインだった。


「さて、最後の一人は、凛としたところが魅力的なネリスだな」
出場者の一人、ネリス。レイピアを手にした凛とした姿が特徴的な女剣士。
「レイピア片手に華麗に舞う一輪の華。凛然とした姿と魅惑の絶対領域のコラボレーション。華麗に繰り出される剣技と共にふわりと舞い上がる黒のミニスカート……イイよなぁ、ホント」
うっとりとした表情を浮かべるパタック。彼の頭の中では、そんなネリスの姿が映し出されていた。
「毎回思うんだけどさ。どうして、そういう方向に持っていくのかな?」
呆れるを通り越して感心するライン。
「お前だって分かるだろ? 可憐な華だから愛でたくなるっていう気持ちが」
「いや、そう言われても……」
いまいち例えがよく分からないと言いたげなライン。
はなの字違いだが、花とは観賞するものではないのだろうか?
他にも薬草の原料や着色料にも使われるが。
「華は愛でるもの、一輪しかない華だからこそ、みんなで愛でてやるのさ」
フッと肩を竦めて見せるパタック。
「例えは意味不明だけど、要するにパタックは女好きって事でしょ」
「まー、早い話はそういう事だな」
ハハハと、豪快に笑うパタック。
「まあ、それはそれとして。他の選手達は、武器に何らかのギミックがついてたり、法術やバーサーカーとか珍しい特徴があるが、ネリスにはそういった目立つ特徴がないんだ」
ネリスは、自分の技術を高めることのみが強さだと信じているという。
「他の7人と比べたら、派手さに欠くかもしれないが、ネリスのそういう姿勢には惹かれるものがあるな」
やはり人間、自分の力と技で勝ってこそナンボのものという考えがパタックにはある。
「つまり、剣の技術を高めてるって事は、凄い技とか見れるかもしてないって事かい?」
「それは見てのお楽しみってやつだな」
強豪ぞろいの大会で、ネリスがどんな剣技を魅せてくれるのか楽しみだった。


「さて、出場者8人について語ってきたが、どうだ? これで8人のことが分かったろう」
ぐっとエールを飲み干すパタック。
「分かったっていうか、なんていうか、微妙な気がするけど」
遠慮がちに言うライン。
話は横道に逸れたり、関係ない話になったりと、想像や妄想で語ったりと、ほとんど参考になっていない気がした。
「まあ、細かい事は気にするなよ」
パタックが陽気に笑いかける。
「それよか、大会を観戦する上で、忘れちゃならねえ人物がもう一人いるぞ」
「もしかして審判を勤めてるアルミスさんの事かい?」
「その通り! よく分かったな」
そりゃ分かるよと、ラインが苦笑する。
「けど、アルミスさんの事なら大体知ってるよ。毎年トーナメント大会の審判を勤めている女性でしょ? ザルカじゃ有名人だからね」
「だな。優秀な神官の家系の生まれで法術の天才。どんな相手も一発でその身動きを封じ込めちまう法術は、まさに一撃必殺! 誰もが知ってる絶対無敵可憐な最強審判さんだからな。その名を知らない奴の方が少ないか」
「いや、その妙な肩書きは、初めて聞いたけど」
おそらくパタックの周囲では、そう呼ばれているのだろう。
「俺の仲間にゃ、試合そっちのけでアルミスの姿を拝むのが目的で会場に通ってる奴もいるくらいだ」
「へぇ」
有名な武芸者や剣闘士目当てに、闘技場に通う客がいるという話はよく聞くが、審判目当ての客というのはあまり聞かないなとラインは思った。
だがアルミスの容姿と審判としての活躍を考えれば、彼女に人気が出るのも分かる気がする。
「一部の連中は、隠れて非公式なファンクラブなんてのも作ってるぜ」
「ファンクラブって」
何故隠れているのか疑問だが、深くは考えない方が良さそうだ。
「まあ、アルミスちゃん可愛いからなぁ。かく言う俺も会員の一人だったりするが」
その言うとパタックは、アルミスの魅力を饒舌に語り始める。
可憐な容姿、審判としての活躍、暴走した選手を法術で止めた事など、下品な妄想なども交えて延々と。
(こりゃ、朝まで語り続けるな)
パタックの活き活きとした様子を見て、ラインはそう思った。

―――――――――――――――
・あとがきみたいなもの。

ここで語られる出場者達の人物像は、六界ウィキなどを参考にした
想像…というか妄想に過ぎません。
ネタを意識してるので、実際の人物を大きく異なっている可能性が大いありますのでご了承ください。

雑文・乱文・誤字・脱字はご容赦ください。
 

ある昼下がりの一時

 投稿者:エリシア  投稿日:2010年 2月 4日(木)22時55分39秒
  アルビス城内、回廊を歩く二人の影。
一人はエリシア。もう一人は壮年の男。
男の名はモルデン。アルビス軍に在籍する将軍の一人。一部の兵からはモブデン将軍というあだ名で慕われている。

「つまり前線の部隊を指揮する時は、ある程度臨機応変に対応しなければならないわけだな。本陣から前線部隊に命令が伝わるタイムラグ。本陣から命令が届いた時には、目の前の状況が全く異なる展開になっていた事もありましたからな」
「なるほど……」
回廊を歩きながら、エリシアはモルデンの経験談を聞いていた。
将となってまだ1年という事もあり、自分がまだまだ新参者である事は自覚していたエリシア、暇さえあれば、色々な将軍達から積極的に話を聞こうと心がけていた。
モルデン将軍はよく前線で部隊を率いて戦うという。自ら部隊を指揮して戦う能力が低いエリシアにとっては、彼の部隊指揮の経験談は勉強になる。
ただ、エリシアは部隊を指揮する将よりも、軍師としてサポートする将として期待されている。
だが、それでも将軍達の経験談を聞く事は、プラスになる事はあれマイナスにはならない筈だろう。
それに人を手足のように使う立場にいる以上、彼らの事をよく知っておかねばならないと思いもある。
戦いで真っ先に死と隣り合わせに立たされるのは、名のある将ではなく、前線で戦う兵であり将であるのだから。

「……あれは?」
「どうかしたか?」
「いえ、あそこにいる方は、何をしているのかと思いまして」
エリシアの視線の先には、昼下がりの日の光で照らされた中庭の中央に立ち、笑顔を浮かべながら何かを撒いている青年の姿があった。
「あ、あいつは……!」
「お知り合いですか?」
「俺の部隊に所属している法術士の男なんですが、おい! 何をしている!」
モルデンが怒鳴りながら、中庭へと歩いていく。
「おお、これはモブデン将軍。今日もお日柄がよく、絶好の散歩日和ですな」
怒鳴られた青年は、特に驚いた様子もなく挨拶をした。
「モルデンだ。その名で呼ぶのはやめろ」
苦虫を噛み潰したような顔をするモルデンだったが、青年は気にした様子もなく、形だけ頭を下げる。
傍から見ればこの青年、慇懃無礼な態度に見えるが、モルデンは特に気に触ったような素振りは見せない。
「おや、そちらの女性は?」
後からやって来たエリシアに気付き尋ねる。
「始めまして、エリシアと申します」
「これは、ご丁寧にどうも」
青年は芝居掛かったように、うやうやしく頭を下げてみせる。
「わざとらしい態度が目に付く奴ですが、悪気はないので、あまり気にしないでやってください」
フォローを入れておかないと不味いと思ったのか、モルデンが小声で耳打ちする。
エリシアは、承知しましたというように小さく頷く。
その表情から、気にしていないように見えるが、普段からポーカーフェイスを通している事を考えると、その真意は読めない。
(もう少し、表情豊かになってもいいと思うんだがな)
将軍として、自分の感情を顔に出さない事はある意味で良い事だろうが、ずっとそんな調子じゃ疲れるだろう。モルデンはそう思った。
「ところで、ここで何をしているのですか?」
エリシアが尋ねる。
彼女自身、青年の態度や言葉遣いに関しては、あまり気にしていなかった。
彼の言葉や態度からは、悪意のようなものは感じられないから。
ただ、何故そんな芝居掛かったような口調と仕草をするのかは気になるが。
「何かを撒いていたようですが……コーヒー豆ですか?」
庭に撒かれた黒い豆のようなものを見て尋ねる。
「ほぅ、やはり分りますか」
青年は感心したような表情を作ると、手に持ったコーヒー豆の袋を見せる。
「お前、城の中庭に何を撒いているんだ!」
モルデンが呆れ半分、怒り半分といった感じで怒鳴る。
「これは心外。自分はアルビスのためを思って、豆を撒いていましたのに」
「……どういう意味だ?」
「これは東のとある国に伝わる、災いを払う儀式なのですよ」
「災いを払う儀式?」
うさんくさそうな顔をするモルデンだが、青年は気にすることなく続ける。
「はい。自分の知人に貿易商人がおりましてね。彼は、様々な国と商売を行なっているのですが、ある国の人間と取引をした際に、この豆まきという風習を知ったそうです」
その商人の話によると、一年に一度今日この日に豆を撒く事で、一年の災厄を払うらしい。
「バーン国との戦いは終結しましたが、傷付いた軍の再編にリヴォル帝国の存在など、我がアルビス国の前には問題が山積です。おまけに、最近では不振な事件も発生しているとか。せめて、心持だけでも災いを払おうと、大量の豆を買い込み、こうして撒いているのです」
「ただの縁担ぎか」
呆れたように呟くモルデン。
「戦国武将達も、戦では縁起を担いでいた事をモルデン将軍はご存じないのですか?」
嘆かわしいといった様子で青年。
「あの荒くれ者で勇猛な海の男達でさえも、海の迷信を信じ、縁起を担ぐと言われているのですぞ」
雄弁な口調で語る青年に押されて、モルデンはたじたじとなる。
(そういえば、そういう話もありましたね……)
戦の際に、兵士達の士気を鼓舞するために縁起を担ぐという話をエリシアは聞いたことがある。
海の男についても、前に海軍に所属する将軍から海での戦い方を聞いた時、そんな話を聞いた事がある。
海の男達は、勇敢で荒くれ者ぞろいだが、一方で、海にまつわる迷信や伝説といったものを信じていると。
それは、彼らが誰よりも海の恐ろしさを知っているからだという。
海の恐ろしさをよく知っているから、そういった迷信や伝説が広まったのだと。
「こうやって、縁起を担ぐ事は、兵達の士気を高める事にも繋がるのです」
「だが、食べ物を粗末にするのはな……」
青年の言いたい事は分るが、モルデンは難しい顔をする。
「なに、こうして撒いた豆は、後でハト達が食べるてくれるでしょう。縁起を担ぐとともに、ハトにエサをやっていると思えば一石二鳥。抵抗もありますまい」
「それは、そうかもしれんが」
うーんと唸るモルデン。
「それよりも、お二人も撒いてみてはいかがですかな?」
コーヒー豆の入った袋を二人の前に差し出す。
「いや、俺はいい。食い物を撒く気にはなれん」
キッパリと断るモルデン。文化や考え方の違いだろう。豆を撒くという行為は、彼には馴染まないようだ。
「私も遠慮しておきます。もう十分撒いているようですし」
エリシアも丁寧に断る。
中庭を見渡すと、いたる所に豆が撒かれている。撒きすぎじゃないかと思うくらいだ。
「それは残念……では、年の数の分だけお取りください。一年の無病息災が約束されるそうですぞ」
「また縁担ぎか。まあ、貰える物は頂くが」
差し出された袋から年の数の分だけコーヒー豆を取るモルデン。
見ると、40粒近く手にとっている。そんなに多く、どうやって持って帰るつもりなのだうか?
「さ、エリシア将軍も」
「いえ、私は……」
「遠慮なさらずにどうぞ」
こんな場所でコーヒー豆を貰っても……という思いもあるのだが、折角の好意を無碍にするのも気が引ける。
色々と気になる事はあるが、とりあえず年の数の分だけ豆を手に取るエリシア。
それを見届けると、青年は満足したように頷く。
「それでは、自分は他にも豆を撒かねばならない場所があるので、これにて失礼いたしましょう」
青年は畏まって頭を下げると、中庭から去っていく。
それを呆然と見送る二人。

「……いったい、何だったのしょうか?」

それは、なんだかよく分らない昼下がりの一時だった。

―――――――――――――――
・あとがきみたいなもの。

一日遅れの時期ネタです。
物語の時間的には1740年辺りのお話という事で。
突発的に思いついたお話なので、意味不明な内容ですが(それはいつもの事)
生暖かい目で、流してやってください。

雑文・乱文・誤字・脱字はご容赦ください。
 

観戦者たちの語り場~出場者考察編~

 投稿者:DP応援者の一人  投稿日:2010年 2月 2日(火)23時25分42秒
  ――――――――――
始めに。
タイトルは考察編となっていますが、内容はDP主役8人のイラスト感想的な物となっています。
またネタに走ったり、内容が偏ってたりしますが、バカ話だと思って、広い心で流してくれると嬉しいです。

・登場人物

パタック:トーナメント大会観戦者のオジサン。賭け事が好きで、また助平なところもある。一人称は「俺」

ライン:20代の青年。トーナメント大会は観戦したいけど、中々いけないでいる。物腰の軟らかい性格。一人称は「僕」

――――――――――

ザルカ城下町の酒場。
客達は、トーナメント大会の話で持ちきりだった。
その酒場の片隅の席に、二人の男がいる。
一人はパタック。無精ひげを生やした男。毎年、大会観戦が楽しみで、期間中は欠かさず大会会場に足を運んでいる。
もう一人はライン。まだ若い青年。両親と共に小さな武具屋を営んでいる。大会観戦を楽しみたいが、仕事が忙しく、滅多に観戦に行けないでいた。
そのため、こうして酒場に足を運んでは、その日の試合の話を聞いている。
今日は、パタックから8人の選手について聞くのが目的だった。

「それじゃ、巫女服の少女、瑞希ちゃんからいくか」
パタックが言う。
「瑞希さんというと、あの珍しい格好の女の子だね」
瑞希の事は、ラインもよく知っている。と言っても、実際に顔をあわせた訳ではなく、会場で見ただけだが、珍しい名前と彼女の容姿はよく覚えている。
「巫女さんといや、袴の裾が長い巫女装束姿が基本だが、瑞希ちゃんのように、アレンジの入った巫女服も良いもんさ」
「へえ、あの巫女服っていうのにもバリエーションがあるんだ」
「ああ、巫女装束もいいもんだぜ。露出度は皆無に等しいけど、あれには独特の魅力がある」
と言われても、ラインは巫女さんについてよく知らないので、巫女服と巫女装束の違いはよく分らない。
「要するに成瀬の風華さんや真田の弥生さんが着ているのが巫女装束。それ以外の巫女着、袴の丈が短かったり、袖がなかったり、スパッツだったりするのが、巫女服って事だ」
もっとも、これはあくまでパタック個人の見解である。
「うーん……分ったような分らない様な……」
曖昧に頷くライン。風華さんや弥生さんと言われても、会った事がないので、どういう姿なのか全く想像できない。
それ以前に、何故ザルカ生まれのパタックが、その名を知っているのかも謎だったりもするが。きっと、同名の巫女さんでもいるのだろう。
「っと、勘違いするなよ。俺は別に巫女装束と巫女服、どっちが上だとか言うつもりはないぜ。巫女装束に独自の魅力があるように、巫女服にも巫女服でしかない魅力がある。それは瑞希ちゃんの姿を見れば一目瞭然だろ?」
「確かに」
巫女装束や巫女服の違いが、いまいち分らないラインだったが、瑞希に魅力があるという事については、同感だった。ラインとしては、8人の中では、一番、応援したい女の子だったりもする。
「それに裾の長い巫女装束じゃ、彼女の華奢な生足は拝めないしな」
ニヤリと口元を歪めるパタック。
なんとなく、やらしい笑みのようにも見えたが、パタックの気持ちはラインにも理解できた。
「あの幼さを残した顔に華奢な身体ってのも、可愛くて、惹き込まれるものがあるしな」
「そ、そうだね」
何故か照れたように頷くライン。もしかしたら、瑞希のような子が好みなのかもしれない。
「もし機会があったら、茂みか宿にでも連れ込んで、どうにかしたいもんだぜ」
「そ、そうだね……って、いや、それはダメでしょ!」
思わず頷きそうになって、慌てて否定する。それは、一歩間違えれば犯罪だ。
「冗談だよ、冗談」
笑って誤魔化すパタック。
「そ、それはそうと、瑞希さんって大丈夫なのかな?」
このままパタックのペースで話を進めると、スケベな話になりそうな気がしたラインは、話題を変える事にした。
「大丈夫って、何が?」
「ほら、華奢で、腕力もなさそうな感じだから……」
「そうだな。もし暴漢にでも襲われたら、腕力じゃ押されて、乙女の危機だ」
「そうじゃなくて! いや、それも心配だけど。華奢そうな子だから、トーナメントで強豪相手に渡り合えるのかって意味だよ!」
一瞬、そんなシーンを想像してしまい、慌てて頭を振るう。
「ま、心配ないだろ」
そんなラインの様子を楽しそうに見ていたパタックが、軽い口調で言う。
「決勝トーナメントに出場してるって事は、それ相応の腕を持ってるって事だろ」
「それは…そうだけど」
パタックの言うとおり、決勝トーナメントに出場している時点で、瑞希に相応の実力がある事は容易に想像がつく。大した実力もなく、運だけで勝ち上がれるほど甘い大会ではないから。
それでも心配だと思ってしまうのは、やはり瑞希が華奢な少女に見えるからだろうか?
「まあ、華奢な身体してるから、重いのを一発喰らったらヤバイかも知れねえけど、彼女の獲物は弓矢だろ? つまり距離を取っての戦い方が基本になるわけだから、相手が飛び武器を持ってない限り、距離を詰められなけりゃ、攻撃を食らう事はねえさ」
逆に距離を詰められれば、途端に不利になる。相手の攻撃が届かない所から矢を射るのが、弓使いの戦い方の基本となる。
「けど、距離を取るって言っても、弓矢って腕力がないと十分な威力が期待できない武器だよ。腕力がないと射程も延びないし」
「その点は心配ないだろ。噂じゃ彼女の弓、風の法術が施された代物らしいぜ」
詳しい事はよく解らないが、施された法術の力で、華奢な腕力でも鋭い矢が放てるらしい。
「それに、切り札として特別な矢を用意してるって言うし、見た目可愛い女の子だからって、侮っちゃいけないぜ」
「なるほど……」


「出場者の一人、キルスティも見た目で侮っちゃいけない子だな」
「あの人形みたいなのを連れてる女の子だね」
出場者の一人、キルスティは、瑞希と同じく幼さを残す容姿の少女である。
瑞希ほど珍しい服装をしているわけではないが、逆に普通の女の子っぽい服装なので、大会選手の中では珍しいかもしれないが。
「ま、俺としては、薄着な格好と妹チックな容姿が魅力的なんだがな」
にやけた表情で言うパタック。
「ところで……最近の助平な野郎どもは、女選手を見るや否や、胸の大きさや身体付といったものを肴に盛り上がる」
眉間にしわを寄せ、口調も真面目なものになる。
確かに、トーナメント大会女性部門には、国内だけではなく、国外各地から美しさを兼ね備えた女武芸者達が集まる。
純粋に彼女達の力と技のぶつかり合いを楽しみたいという者もいるだろうが、一方で彼女達の美しい姿、魅力あふれる容姿、魅惑のスタイルに目を奪われる者も少ない。
それはある意味で仕方のないことだろう。魅力的な女性を目にして、欲情を持ってしまうのは健全な男子たる証。
「だが、それにしても、最近の助平野郎どもは、やれイイ乳をしてるとか、ナイスバディとかばかり。だが、果たしてそれだけで、彼女達を評価して良いものなのだろうか?」
「は、はぁ……」
「勿論、俺も胸の大きな女やスタイル抜群な女は大好きさ。だが! 女の魅力はそれだけじゃないはずだ!」
バン! と、テーブルを思いっきり叩く。そして
「瑞希ちゃんやキルスティのような、控えめ胸や未成熟な身体も十分魅力的じゃないか! 巨乳や豊胸、ナイスバディにはない魅力と魅惑がそこにある! 貧乳、控えめボディというのは、絶対に外してはならない、必須要素の1つなんだっ!!」
はっきりとした口調で言い切る。
周囲の客達が、不審そうに……その通りと、頷いている客もいるが……パタック達を見る。
「そ、そういえば、あのキルスティさんって、武器らしい武器は、持っていなかったけど、法術士か何かなのかな?」
このまま話を続けさせると、自分まで危ない人に思われかねない。慌てて話題を変えるライン。
「いや、キルスティは法術士じゃなくて、剣や槍で戦う戦士タイプだぞ」
「そうなんだ」
だけど、瑞希や他の選手達のように手に武器らしい武器は持っていなかったような気がする。
(そういえば、あの人形みたいなのが、鎌を持っていたけど、まさか、あれが代わりに戦うとか?)
鎌を持った人形のような物体に戦わせる様子を想像するライン。

『使い魔! 鎌で切り付ける!』
『カマー!』

「お前、何想像してるんだ? キルスティは4つの武器を使い分けて戦うんだよ」
パタックが説明する。
「詳しい事は俺にもよくわかんねえが、何でも4つの武器と契約しているらしくて、普段は使い魔に収容してるらしい」
使い魔の事はよく知らないが、そういう事が出来るらしい。
また、某国の将軍は、使い魔である目玉蝙蝠と、視覚をリンクさせる事で、色々なものを見る事が出来るという。
だからパタックも、そういう使い魔が欲しいと思っている。
使い魔の目を通せば、普段見れないものが色々と見れるから。そう、普段見る事に出来ない色々なものが。
「パタック。何かろくでもない事を考えてない?」
「い、いや、そんな事はない。ただ、ちょっと男の夢ってものを夢想してただけさ」
フッと、格好をつけて誤魔化す。
「ふーん。……でも、キルスティさん、4つもの武器を使いこなすのか」
武器に携わる仕事をしてるラインとしては、嬉しく思った。一人でたくさんの武器を使ってくれる戦士が増えれば、当然、武器の売り上げ伸びるから。
商売関係なしでも、複数の武器を使いこなす事は、よい判断だと思う。
それぞれの武器には長所と短所がある。
例えば、槍は剣に比べてリーチは長いが、狭い場所ではリーチの長さが仇となる。弓も、剣や槍の届かない遠距離から一方的に攻撃できるが、敵味方入り乱れる乱戦では、味方に矢を当ててしまう危険もあるし、接近されたらそれまでだ。
だから、数多くの武器を使いこす事が出来れば、状況に応じて最適な武器で戦う事が出来る。それは戦いを有利に進める重要な要素の1つだ。
「まあ、あまりたくさんの武器を使いこなそうとすると、器用貧乏で終わっちまう事もあるけどな」
パタックが苦笑する。
人間、あれもこれも何でも出来るほど器用ではない。
最初の内は、一つの武器に絞って、慣れてきたら別の武器も…というのが、上達の近道だと思う。
もちろん、キルスティが器用貧乏だと言っているわけではない。
だが、何でもバランスよくこなせる人間は、それぞれの分野では1番になれないという話はよく聞く。
稀に何でもバランスよくこなしながら、それぞれの分野でも1番という人間もいるが、それは本当にごく稀の話だ。才能や素質でもない限り、無理な話だと思う。
(それでも、努力をすれば、大抵の事は何とかなると思いたいけどな)
努力する天才には勝てないだろうが、努力しない天才には勝てる筈だから。
「パタック、どうかしたのかい? 真面目な顔してさ」
「いや、なんでもない。それより、4つの武器を使うキルスティが、強豪選手達を相手にどんな戦いを見せるのかは楽しみだな」
「そうだね」


「出場者の一人、アンジェリナもある意味、どういう戦いを見せてくれるのか楽しみな選手だな」
「アンジェリナさんと言うと、あのシスターの女性だね」
出場者の一人アンジェリナは、シスター服を身に纏った女性。シスターがトーナメント大会に出場するなんて珍しいとラインは思った。
「シスターって、戦いとは無縁の人だと思っていたんだけどね」
ラインの中では、シスターとは清楚で慈愛に満ちた女性というイメージがある。実際、彼の知ってる教会のシスターはその通りの女性だった。
「まあ、中には修行や布教のために各地を旅して回ったり、傭兵や冒険者をやってたりする僧もいるって聞くけどな」
シスターにも、そういうのがいるのかもしれないとパタック。
「それじゃ、そのアンジェリナさんというシスターも、修行か何かで大会に参加したって事なのかな?」
「あー、どうだろ? 噂じゃ、アンジェリナは、教会を破門されてるって話だからな」
「そうなんだ。けど、どうして?」
見た目の印象では、破門されたような破戒僧には見えない。
「パッと見た感じ、胸もけっこうあるし、腰も引き締まっていて、スタイルも良さそうだったからな。あんな魅力的でイイ身体をしてりゃ、破門されても仕方ないよなぁ」
「はあ?」
「さりげなく見せる胸の谷間もポイント。スカートのスリットと合わせて、シスターのイメージを壊すことなく、彼女の持つ色気を演出しているな」
呆気に取られるラインを無視してパタックが続ける。
「シスター服に包まれた魅惑の肢体。僅かに覗かせる胸の谷間とスリットから、その片鱗を覗かせるが、その身を神に捧げてしまっては、我々には、その全てを解き明かす事は許されない。おお、なんと言う悲劇! 信仰とはかくも残酷なのか!」
突然、芝居が掛かったように語り出すパタック。時々、人が変わったかのようなしゃべり方をするなぁと思ったライン。
「人々は泣いた。彼女の神々しいまでの裸身を拝む事の出来ぬ我が身を呪った! 絶望した!! ……神は思った。私が彼女を束縛する事で、人々は悲しみに暮れ絶望する。ならば、彼女を束縛するのはやめよう。神の束縛から解き放ち、自由な人々の中に返す事が自然なのだ。教会はアンジェリナを破門にした。人々に彼女のヴェールを解き明かす事を許すために」
まるで、詩を詠むような口調で語るパタック。
「そ、そんな理由で、破門にされるわけないと思うけど」
ラインが呆れたように言う。
「それだったら、彼女を独占する神様や教会を快く思わない人が多くなって、事態を重く見た教会中枢の人間が、シスターを厄介払いした、という話の方が、まだ真実味があるように思えるよ」
「お前も、妄想力が豊かになったな」
「あまり嬉しくないけどね」
「まあ、さっきのは冗談として。本当は刃物の武器と攻撃法術を使ったから、破門されたらしいぞ」
教会の戒律では、刃物や攻撃系法術の使用を禁じられているという。
戒律とは、教会の人間は勿論信者達も絶対に守らなければいけない掟のようなもの。それを破ったら相応の処罰を受ける。破門されても仕方がない。
ただパタックも、アンジェリナ本人に聞いたわけではないので、それが本当なのかは解らない。破門されてから刃物の武器を使うようになったという可能性も考えられるからだ。
「ま、破門された理由はおいといて、このアンジェリナもシスターだからって侮れないぜ。刃物付きワイヤーを相手に巻きつけて、電撃の法術を身体に直接流し込むって戦法で、並み居る女達を次々と悶絶させてきたんだからな」
「ず、すいぶんと、過激なんだね」
若干、言葉の表現の仕方が気になったりもするが、巻きつかれたワイヤーから直接電撃を流し込まれたら、かなりのダメージだろう。
(……いけない。僕もパタックに毒されてきたのかも)
楽しそうに電撃ワイヤーで女選手を痛めつけるアンジェリナの姿を想像してしまい、落胆するライン。
「俺としては、アンジェリナには特に頑張って欲しいところだな」
「どうしてさ?」
「そらぁ、決まってるじゃないか。アンジェリナが勝ち続けば、瑞希ちゃんやキルスティ、他の女選手達の電撃プレイが見れるじゃないか!」
心の底から、楽しみそうにパタック。
「そ、そうだね……」
呆れたように笑うライン。
まあ、パタックの妄言は置いておくとして、トーナメント大会に出場するシスターというのは珍しい存在。彼女がどんな風に戦うのか、楽しみだった。


「珍しいといえば、メイドさんも出場してたよね」
「ああ、カルラのことだな」
「うん。あのメイドさんが出場選手と知った時は驚いたよ」
大会参加者の一人、カルラはメイド服を身に纏った女性。
会場で見かけた時、身分の高い観客の付き人か何かだと思っていた。
メイドというのは、主人をサポートする使用人のようなもので、武器を持って戦う職業ではないと思っているからだ。
「中には、主人を守るために武術を学んでいるメイドもいるらしいけどな」
パタックが補足する。
「けど、あのカルラさんってメイドさん。ぱっと見た感じ大人しそうだったし、戦いとは無縁の人に見えたよ」
実際、カルラが戦っている姿を見た事のないラインには、清楚で大人しいメイドに見えた。
「俺も最初見た時は、そう思ったさ」
パタックも、カルラの第一印象はラインと同じだった。
臆病なくらい無口の少女。腕に自身のある出場者達と張り合えるとは思えなかった。
だが、いざ試合が始まるとそれまでの大人しそうな雰囲気は一変し、自分の体が傷付く事も恐れずに剣を振るう。自分の身体すら道具のように扱う戦い方は、勇敢や無茶という言葉を通り越した、無謀な戦い方に思えた。
「なんつーか、まるでバーサーカーのようだぜ」
バーサーカーとは、どんなに傷ついても戦い続ける恐るべき戦士。怒りで我を失った野獣とも言われている。
普段はそうでもないのだが、戦いになると人の限界を超えた超人的な力を発揮するとともに、疲れや痛み、戦いの恐怖というものを感じなくなる。
そして、自我を失うと敵味方を問わずに、全てを屠るまで戦い続ける。例え親しい仲間や親友、肉親であっても例外ではない。周りにいるもの、全てが屠るべき敵なのだ。故に狂った戦士、バーサーカーと言われ、恐れられている。
「それじゃ、あのカルラさんは、そのバーサーカーだって事?」
「まあ、例えだけどな。普通、バーサーカーとか狂戦士って呼ばれるのは、傷つく事も構わずに敵と戦い続ける勇敢な戦士とかの事を指すのさ」
一方で、無法者や暴れ者、人殺しばかりする者などもバーサーカーと呼ばれる。
だから例え賛辞の意味でバーサーカーや狂戦士と呼ばれても、素直に喜ぶ人間はあまりいないという。
「まあ、由来が由来だからな。悪い意味で使われる方が多いんだろうけどな」
「なるほど……」
パタックの博識ぶりに感心するライン。さっきまで、すぐにスケベな話に持って行きがちな男だったから、余計そう思った。
「けど意外だなぁ。あんな可憐そうな女性に、そんな一面があるなんて」
「まー、その普段とのギャップっつうか、二面的なところがカルラの魅力だと思うんだけどな」
ニッと笑うパタックの顔は、いつの間にかやらしい感じになっていた。
「自分の身体を道具にように扱うってとこも、見方を変えると、凄く惹かれる要素だぜ」
「そ、そうかな?」
「そりゃそうだろ。彼女はメイドだぞ、メ・イ・ド! メイドって言ったらあれだ。ご主人様へのご奉仕ってのが、相場で決まってるもんさ。あんな可憐な子に奉仕してくれる姿を想像してみろ。胸も中々のものだし、そんな身体を道具のように扱うって聞きゃあ、おめえ」
だらしない程ににやけるパタック。彼の頭の中は、カルラへの邪な妄想でいっぱいだった。
「やっぱし、あれだ。まずは、アレをだなぁ…」
またスケベな話を始めたパタックに苦笑しつつ、決勝トーナメントのリストに目を移すライン。
幼さを残した少女二人に、荒事とは無縁なイメージのシスターとメイド。
パタックから四人の選手の話を聞いた限り……若干妄想も入ってそうだが……、四人とも個性的な選手のようだ。
(残りの四人の選手は、法術士と剣士……いったいどんな選手なんだろう?)
残り四人が、どんな感じの選手なのか気になるが、とりあえず、パタックの助平な話が終わるのを待つラインであった。

―――――――――――――――
・あとがきみたいなもの。

ここで語られる出場者4人の人物像は、あくま想像に過ぎません。
実際の人物を大きく異なっている可能性が十分にあります。
ネタだと思って、笑って許してやってください。

雑文・乱文・誤字・脱字はご容赦ください。
 

大会観戦者たちの語り場

 投稿者:DP応援者の一人  投稿日:2009年12月12日(土)01時52分54秒
  ルーイガルド、西大陸の中央部に位置する小国ザルカ。
辺境に数多く存在する小国の一国だが、近年、新都市開発が行われるなど繁栄の一途を辿っている。
また、毎年行われる男女別のトーナメント大会には、周辺国からも多くの戦士たちが集まり、ザルカを代表する一大興行として有名である。

今、ザルカでは、そのトーナメント大会が行われていた。
すでに男性の部が終了して、女性の部が行われている。
その女性の部も今日予選最終戦が終了して、決勝トーナメントに出場する8人が決定した。

下町の一角にある食堂も兼ねた酒場。
普段はそんなに賑わっていないのだが、この時期は違った。
日が暮れる頃には、大会を観戦していた人々が集まり、酒やつまみを片手に大会の話で盛り上がる。

人々が、トーナメント大会に夢中になる理由は様々だ。
純粋に選手たちの力と技を見て楽しみたいという者もいれば、流れる血や興奮に満ちた戦いといった暴力への欲望に魅せられたという者もいる。
中には、女選手たちの戦いに淫らな興奮と欲望を覚え、あわよくば「ぽろりが見れるかも?」といったスケベ心を抱いて観戦する男達もいたりする。

だが、そういった理由とは別にもう一つ、人々が夢中になる要素がある。
大会の試合結果や優勝者を当てる「賭け」である。
国公認の賭けは、観客達が落とす金と並んで、ザルカ国の重要な収入源となっている。
また、私設の賭け屋も存在しており、賭けを盛り上げている。
賭けの種類は様々で、誰が優勝するのかを当てるものや、試合毎にどちらが勝つのかを当てるもの。中には、予選一回戦で敗退する選手から優勝者までの順位を完璧に当てるといったものもある。
観客達の中には、試合そのものよりも、賭け目当てで観戦する者も少なくなかった。

「あ~、くそっ! 思い出しただけでも腹が立つ!」
ひげ面の男が、いらいらした様子でテーブルを叩く。
男の名はフック。大柄の肉体と荒々しい顔つきから粗暴な印象の男だが、実際、その通りである。
普段、新都市開発工事の労働者として工事に従事しており、体力と腕力だけは人並み以上あるのだが、なまじ力ありすぎるせいか、気に入らない事があると腕力に出る困ったところがある。
「そうカッカしなさんなよ」
向かいの席の男が、軽薄そうな笑みを浮かべながら言う。
彼の名はパタック。普段、何をやっているのかは判らないが、夜になると必ず酒場に顔を出す常連客の一人。
「賭けてた女が負けちまったんだ! これがいらつかずにいられるか!」
フックは、機嫌の悪さを隠そうともせず、怒鳴り返す。
彼は、とある女選手に賭けていたのだが、今日行われた予選最終戦で、その選手が負けてしまったのだ。
おかげで、賭けていた金は、全て賭け屋に持っていかれた。
「仕方ないよ。それだけ相手の選手が強かったんだから」
パタックの隣の席に着いていた青年が言った。
青年の名はライン。ザルカの町で両親と共に武具屋を営んでいる。店の都合で大会観戦に行けない日が多く、店が閉まった夜に酒場までやって来て、大会の話を聞くのが、この時期の日課となっている。
幸い、今日の試合は観戦できたので、こうやって話に参加できる。
この三人は、大会開催した日の夜にたまたま酒場で知り合った間柄で、大会観戦仲間として毎日のように酒場で語り合っていた。
「そりゃあ、ライン。お前は賭けた女が決勝に進出できたから、そんな事言えるんだよ。俺はあの女に財産のほとんどを賭けてたんだぞ」
フックが忌々しげに漏らす。
フックが賭けた女選手は、前評判も良く、決勝トーナメント進出は確実と言われていた。
だからこそフックは、その女選手に財産のほとんどを賭けた訳だが、結果は決勝トーナメント進出にはならず。
「でも、あの女性選手も結構いい勝負をしていたじゃないか」
確かに負けてしまったが、評判通りの実力はあった。ただ、相手選手の実力がほんの少し上だっただけの話だよとライン。
「そうそう。賭けに負けたからって、選手に当たるなんてカッコ悪いぜ?」
「ふん、スカした事言うな。パタック、お前だって賭けてた女が予選で負けて悔しいはずだぜ」
「俺は金が目当てじゃなくて、武器や法術に頼らずに己の肉体のみで戦う格闘娘っ子の心意気に惹かれて、賭けてたんだよ」
パタックは、肩を竦めてみせる。
「なーにが心意気だ。どうせ、その格闘家女の身体に惹かれて賭けただけだろ。このスケベ野郎」
「う」
図星だったようで、肩を竦めたまま、固まるパタック。
「大体、武器や法術なしで大会に出るなんざ、あの格闘女もどうかしてるぜ」
「んな事はないと思うけどな」
パタックが呟く。
確かに、武器や法術を使わずに勝つ進むのは無謀に思えるが、決して不可能ではない。
事実、過去の大会で、拳一つ、魔人の如き強さで優勝した男がいた。
パタックは、その時の興奮を今も覚えている。
その女格闘家の容姿に惹かれたというのは事実だが、身ひとつで大会に挑む心意気に惹かれたというのも嘘ではない。
もちろん、それなりの金額を賭けていたので、その事は悔しく思っているが、だからといって、それを理由に選手に恨み言を言うつもりは、パタックにはなかった。
また、ラインも賭けの結果にはあまり拘っていない。賭けていた金もほんの僅かだし、本人は遊び感覚で賭けているに過ぎない。
だが、フックは違った。
元々彼は大会の内容よりも、賭けで得られる配当金が目当てでの大会観戦だった。
一攫千金を狙って、一年間辛い重労働で貯めた金を賭けにつぎ込んだのだ。
それも、賭けた女選手は必ず決勝に進出できるという評判を信じて。その失望と怒りは大きい。
「あの女、どう落とし前をつけさせてやるか……」
ポキポキと、指を鳴らしながら物騒な事を呟くフック。
「や、やめときなよ、フック」
ラインが顔を青くする。
「負けたからって癇癪起こすなよ」
パタックは呆れた口調で言った。
「賭博は、当たるも八卦、当たらぬも八卦って言うだろ? 外れたからって、カッカッしてちゃやってられないぜ」
「八卦は、占いだと思うけど……」
「……あー、ともかくだ。賭けに外れたからって、選手に当たるのは、カッコ悪いと思うぞ」
間違いを誤魔化すように、カッコつけたような口調でパタック。
だが、フックは納得していないようで、残っていた酒を一気に飲み干すと、不機嫌そうな顔で店を出て行く。
その様子を眺めながら、残された二人は、溜息をつく。
「フックの奴、本当に落とし前を付けに行かなければいいけど……」
ラインが心配そうに言う。
知り合ってそれ程ではないが、いっしょに語り合った仲。犯罪に走って欲しくない思いがある。
「大丈夫だろ。あいつもそこまで馬鹿じゃないって」
心配するラインをよそにパタックは楽観的な様子。
いくらフックが腕っ節といっても、ただ腕力と体力があるだけだ。
予選一回戦で負けた相手ならともかく、予選最終戦まで勝ち続けたのだから、普通に考えてフックに太刀打ち出来る相手ではない。返り討ちに遭うのがオチだ。
それくらいの理屈、フックだって判っている筈だ。パタックはそう思っていた。
もっとも、人間は感情で動く生き物、常に理屈道理に物事を考えて動く訳ではないのだけど。

「ま、それよりも、決勝トーナメントだな」
パタックが、決勝トーナメントに進出した8人のリストを取り出す。
「この中から、誰が優勝するのか。今度外したら、流石に毎日の酒代をケチらないといけなくなるからな」
「また賭けるんだ」
ラインが苦笑する。
「当たり前さ」
予選の時は選手達の情報がなかったので、自分の好みで賭けていたが今度は違う。
予選で8人の戦いぶりを見てきたので、それを元に予想すれば、賭けに勝てる自信がパタックにはあった。
もっとも、前回の大会では、優勝すると予想した選手が準決勝で敗れていたりもするが。
「ライン、お前は誰が優勝すると思ってるんだ?」
「僕はほとんど観戦してなかったんだけどね……」
だから、この8人がどのくらいの実力を持っていて、どういった戦い方をするのか、よく知らない。
だが、そう言いつつも、優勝者を予想する事には乗り気な様子だった。
何だかんだいっても、こういう風に誰が優勝するのか予想するのは楽しいものなのだろう。

果たして、この8人の中から、誰が優勝の栄冠を勝ち取る事になるのか?
それはまだ、誰にも判らない。

―――――――――――――――
・あとがきみたいなもの。
DP、どんな物語になるのか楽しみにしています。

雑文・乱文・誤字・脱字はご容赦ください。
 

坩堝な旅路4

 投稿者:エリシア  投稿日:2009年11月24日(火)22時28分25秒
  転位ゲート。
帝王ラスブロスが生み出したとされる六つの世界を繋ぐ門。
膨大な魔力が流れ込む南北どちらかの果て、そして、その膨大な魔力を貯蔵する永久凍土地帯に存在する未知の世界への門である。

ルーイガルド1から門へと移動してきたエリシア。
人の住まない永久凍土地帯にぽっかりと開いた大穴。
大きさは、ダルスバード一隻がなんとか通れる程度で、六界戦争では、ここを通って連合軍はルーイガルドの地に降り立った。

(しかし、未知の技術で作り出された転移ゲートですか……)
遠く離れた場所と場所…人の足では一生かかっても辿りつけない遠い距離をあっという間に移動出来る未知の技術で作られた門。
その手の研究家ではないエリシアでも、ゲートがどういった理屈で転移を可能にしているのか興味がある。
門を調べた法術士達によると、召喚術を応用した転送術が施されて、転移を可能にしているらしいという事までは解っている。だが、細かい理屈やどういう方法で作られているのかなど、法術の専門家達でも、解明する事は出来なかったという。
ある法術士は、「この門が人の手によって作り出されたというなら、これを生み出した人間は天才を遥かに凌ぐ天才だ」と漏らしたという。


(しかし、静かですね……)
静寂に包まれた空間。
静かな場所というのは、考え事にも集中出来るし、心を落ちつけてゆっくりも出来るので、割と好きだが、こう静か過ぎると、少し寂しさを感じる。
(これから、どうしましょうか……)
門をくぐれば、他の五つの星へ移動出来る。
エリシアの故郷の星でもあるアルファ。サウラ達の住むザールック。ELEGYという物語が語り継がれるラドリザン。今のところ、これといった物語はないが、ガーマスとレイトンという未知の世界。
(せっかくなのだから、まだ見ぬ星へ行くのもいいかもしれませんね)
と、その時、突然天を裂くような強烈な叫び声が、エリシアの耳を貫いた。
「!!?」
頭の中が爆発したような感覚。一瞬、何が起きたのか理解出来なかった。
酷い耳なりに悶絶していると、一人の少女が姿を現した。


「ごめんなさい……まさか、人がいるとは思わなかったから」
エリシアの前に姿を現したのは、袖のないワンピースを身に付けた、どこか幼さを残す顔の少女だった。
どうやら、彼女が強烈な叫び声の主らしく、頭を下げて謝っている。
「いえ、こちらも、他に人がいるとは思っていませんでしたから」
と、自分にも不注意があったと言うエリシア。
確かに酷い目にはあったが、これまでの経験に比べれば、それほどの事ではない。
相手も悪気があったわけでもないし、現に少女も心から謝っているので、責める気もあまり起きない。
「でも、耳が……」
「耳の方も、もう大丈夫ですから」
申し訳なさそうに言う少女に、何事もなかったかのように答えるエリシア。
実はまだ耳がキィーンと鳴っているのだが、心配をかけるのは本心ではない。
もう大丈夫と聞いて、ようやく少女も頭を上げる。
そして今度からは、回りに人がいないか、よく確認をしてから叫ぶようにすると約束した。

(しかし、世の中、わからないものですね)
目の前の少女が、あんな絶叫のような叫び声を出した事もそうだが、まさか、こんなトラブルに見舞われる事になるとは。
(徘徊する悪漢や魔物達の事に気を取られ過ぎて、他の事に対する警戒が薄かったのかもしれませんね)
と、心の中で苦笑する。
もっとも、大声で耳をやられるなんて事、普通は考えもしないし、警戒もしないだろうが。
この坩堝な世界では、予想の出来ない事や、お約束的な出来事といった、様々な出来事が起る。
(この先も、色々な事があるのかもしれませんね)
それが、今回のような喜劇か、それとも悲劇かは判らない。
そんな期待と不安を胸にしながら、この坩堝の世界の物語は続いていくのだろう。


・後書きみたいなもの

毎度の事ながら、雑文・乱文・誤字・脱字はご容赦ください。
 

ルディ様好きの妄想

 投稿者:ユウ  投稿日:2009年10月23日(金)03時36分25秒
  ユウ「意外に思われるかもしれないが、神聖帝国で戦闘がない時に一番忙しいのは俺だったりする。内政部門の実務部隊のトップ…と言えば聞こえが良いが、単なる人材不足というのが真相なので余り笑えない。今日も朝から絶え間なく仕事が舞い込んできてテンテコ舞いだ。たとえば―――」

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

オーディス「ユウ将軍、新兵の訓練の件だが」

ユウ「ああ、はい。志願兵の集合と施設、物資の手配は完了してます」

グレアウェムト「カルディアの街道整備はどうなってる?」

ユウ「工期がちょっとおしてるみたいなんで、作業人員を追加してます。経費が嵩んじゃったんで、一部は諦めないとダメかもですねぇ」

アリサ「ユウさん! 軍馬に与える人参がヴェルティカ産ってどういうことです!? レヴァイア産をお願いしてたじゃないですか!」

ユウ「無茶言わないでくれ!あっちとの交易ルートはまだ確保できてないんだ。大体人参なんてどこも同じ…待てっ、弓はやめろ!」

ミナ「ユウ将軍、遊んでいる暇があるなら帝都に偵察でも行ってきてもらえませんか?」

ユウ「今の俺が悪いの!?」

ラビー「ユーー! カレンが俺が大事にとっておいたケーキを取りやがったー!」

ユウ「いい歳してケーキの一つや二つでガタガタ言うな…」

カレン「あ、ユウ。悪いね、あんたの分のルディ手作りクッキー、全部食べちゃったよ」

ユウ「俺のクッキー返せえええええええ!!!」


・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


ユウ「例の盗賊団の対策にもっと自警団を増強するとして…揺れ始めてるパルチアンの有力者に使者を…灌漑設備のチェックがそろそろ終了するから…」

ルディ「こんなに遅くまでお疲れ様です、ユウさん」

ユウ「へ? あ、ル、ルディ様!? こんな時間に一体どうされたんです?」

ルディ「カレンが、ユウさんがそろそろお腹を空かせる頃だから、何か差し入れしてあげると喜ぶんじゃないかって。簡単なものを作ってきたんですが、お邪魔じゃありませんか?」

ユウ「とととんでもない! ちょうど休憩したかったところなんです、ぜひ頂きます!(うおー、カレン様!クッキーの件は不問に付す!)」

ルディ「良かった。お口に合えば良いんですけど」

ユウ「大丈夫です、口の方を合わせますから!…うん、美味しい!」

ルディ「ふふ、良かったです。ゆっくり召し上がって下さいね」

ユウ「(ああ、ルディ様の手料理が食べられる日が来ようとは…それにしても、久しぶりに見るルディ様の部屋着、近くで見ると結構無防備で…)」

ルディ「あの、ユウさん?」

ユウ「ははははひ!?」

ルディ「…? 少しお話を聞いて欲しかったのですけど大丈夫ですか?」

ユウ「はい、もちろん!」

ルディ「ありがとうございます。その……皆さん、懸命に戦ってセリーナを止める決意をしてくださっているのに、私だけいつまでも戦う決心がつかなくて、申し訳なくて。帝国の長として皆さんの期待に応えるには、やはりお父様やセリーナのように、先頭に立って血を流す事も厭わない、強い信念と方策を持つ事を求められるのでしょうか。私は……変わるべきなのでしょうか?」

ユウ「……俺は、戦争する事を躊躇わない事だけが強さだなんて思いません。ルディ様のように『戦いたくない』という想いを貫く事もまた強さじゃないんでしょうか?セルレディカ陛下の『強さ』に惹かれる者がいれば、ルディ様の『強さ』に惹かれる者もいるんです。ルディ様が変わる必要なんて決してない……と俺は思っています」

ルディ「私は戦争のない大陸にしたいと望んでいます。でも現実には皆さんに戦いを強いています。こんな矛盾している私に、皆さんはこれからもついてきてくれるのでしょうか?」

ユウ「むしろ、ルディ様に戦いを強いているのが俺達なので大変心苦しく思っています。ですが、お辛いのは承知でどうかルディ様には今の志を持ち続けて頂きたいと存じます。それが、俺達にとっては道標となり、混迷の時代を生き抜く支えとなりましょう」

ルディ「私が理想を掲げ続ける事が、皆さんの負担ではなく、支えになるというのですか…」

ユウ「私が申し上げたのは、あくまで私個人の想いです。ですが、この情勢下でルディ様の元に集った者達には、大なり小なり共通の想いだと信じています。ですから、ルディ様もご自分をもっと信じてあげて下さい。
…す、少なくとも俺は最後まで、ルディ様と共に歩んでいきたいと思っています。お許し、頂けますか?」

ルディ「は、はいっ。こちらこそ、よろしくお願いします…ありがとう、ユウさん」


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少しはルディ様にも安息の時間があって良いと思うんだっ。
 

坩堝な旅路3

 投稿者:エリシア  投稿日:2009年 9月23日(水)20時49分41秒
  草木もまばらで、むき出しの土が目立つ冷たい大地。
その土も氷のように硬く、大地の実りも乏しいだろうと、容易に想像出来る。
空を見上げると白い雲で覆われている。凍えるような寒さから、雪が降るのではないのかと思えてしまう。

ここは、ルーイガルド1イフ国。
人々は戦よりもまず自然と戦わねばならない寒冷地域。
侵略する魅力もないといわれる程厳しい土地であるイフ国だが、そのおかげで、これまで他国から一切侵略を受けなかった。
そんな厳しい土地だが、そこに住む人々の結びつきは強く、踊りや音楽など楽しみを共用し、陽気な国民性を持つようになっている。
人はその気になれば、どんな生き方も出来る。
どんな厳しい土地でも、そこで生きていこうとする強い意志と気概があれば、生きていけるものなのだ。
そう考えると、このイフ国は決して貧しい国ではないのかもしれない。

そんなイフ国は六界戦争の際、ルーイガルドにやって来た連合軍が最初に降り立った国でもある。
連合軍はダルスバード艦隊を主軸にした電撃作戦を考えていた事もあり、イフ国にはあまり長居せず、すぐに大陸へと渡った。
もっとも、長居するにしても侵略する魅力もない土地といわれるだけあって、大軍が駐留したり拠点とするには、あまり向かない土地がらではあるのかもしれないが。

「しかし、流石に寒いですね……」
ルーイガルド3から海を渡り移動して来たエリシア。
厳しい寒冷地だけあって、肌寒いを通り越して凍えるような寒さだった。
加えて北から冷たい風が吹くと、その寒さはより大きく感じられる。
「もう少し、長めのスカートにしておくべきだったかもしれませんね」
寒さに晒され、特に足の辺りがひんやりとするのを感じて呟く。
耐えられない寒さではないが、スカートから下、スースーとした冷たさは強く意識する。
服装の趣味も混じっているが、動きやすさを考えて、あえて短いスカートを穿いている。当然、スカートが短いという事は、足の露出部が大きくなる事を意味する。
普段なら特に気にならないかもしれないが、こういう寒い地域にはあまり向いていない。
長めのブーツを履いており、ブーツは膝の上の辺りまで覆っているが、それでも太股の部分は素肌を露出したままだ。
おまけに動きやすさを考慮してを入れているスリットも仇となっていた。
切れ目から冷たい空気が中にまで入ってくるので、中もかなり冷える。
ズボンやタイツなど、足全体を覆うものを穿けば済む話なのだろうが、色々と大人の事情的な理由…もといファッションセンス的な理由があって、中々そういう訳にはいかない。
もっとも、雪国でも薄着で通用する世界観なので、慣れてしまえばそれで済む話だったりもする。
実際、ザールックの過去の物語に登場した牙の国の少女も、雪国でありながら肌の露出部も多い薄着だった。
ただ、寒冷地育ちではないエリシアには、慣れるまで時間がかかるのかもしれない。

その一方で、エリシアの周りにも短いスカートを穿いていたり薄着の人物は大勢いる。
例えば、同僚のルティエ。
彼女のスカートにはスリットこそ入っていないものの、その丈の長さは短い方で、足のほとんどを露出している。衣服もエリシアと比べれば、薄着といえる。
サアヌ傭兵団のマスコット的存在であり、軍師でもあるマルキィもかなり大きくスリットをいれている。
そして、六界連合軍の総司令官を務めたアーズ国のサルファーに至っては、羽衣のような衣服を纏っている。布地も衣の様に薄くひらひらとしており、肌の露出も目立つ。
だが、その姿は下品な嫌らしさは全く感じられす、サルファーの美貌と相俟って、女神のような美しさである。
余談だが一部の男性将兵の間では、時々目のやり場に困る…と、嬉しそうに囁いているとかいないとか。
そんな彼女達も本編でイフ国を訪れており、この寒さも体感している。
その際、寒さに震えたかどうかは判らないが、寒いと弱音を吐く事はなかった……と思う。
少なくともエリシアは、そんな姿は見ていない。
「そう考えると、このくらいの寒さで弱音は吐けませんね……」
自分よりも薄着の人が、この寒さの中で平然としているのを見ているから、余計そういう気持ちになる。
負けず嫌いという訳ではないが、弱音を吐くなどして周りに余計な心配をかけるのは心苦しいし、そういう姿はあまり人に見せたくない。
まあ、今回のパラレルワールド坩堝旅は、基本的に一人旅なのだが。

人はその気になれば、どんな場所でも生きていける。
その意志と気概さえあれば。
だから、どんなに寒い場所でも、薄着でいようと思えば出来る。
その意志と気概さえあれば……

「くしゅん」

……それでも、凍えるような寒さの前では、身体は正直だった。

次の移動先は「門」
永久凍土の広がる北の果て。


・後書きみたいなもの

季節はずれですが、真冬で寒空の下でもミニスカートな女子高生さんが元ネタ。
あれを見てると寒くないのかと、いつも思います。

雑文・乱文・誤字・脱字はご容赦の程を。
 

EX

 投稿者:まるまる  投稿日:2009年 8月28日(金)23時21分13秒
  注意……

このSSは、狩人様よりテンプレ使用許可を頂いて作成しております。
あと、短いです。とても、とても。

http://www.jfantom.jp/ex.html
 

レンタル掲示板
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